英国「ピーターラビットの里」で知られる湖水地方の風力発電設備、来夏で閉鎖。地方当局が稼動延長を認めず。景観回復を優先。再エネ事業者は反発、提訴も(RIEF)
2017-12-11 15:41:35
風力発電と景観との議論が内外で起きるが、英国の名勝、湖水地方(Lake District)の近くに建設されている12機の風力発電機が来年夏に、景観保全の理由で撤去されることが決まった。湖水地方はピーターラビットの里としても知られる。
(写真は、湖水地方に近接して建設されたKirkby Moorのウィンドファーム)
湖水地方の風力発電は、カンブリア州ファーネス半島に位置するKirby Moorの一角に設置されている。1991年に建設された英国でも最も古い風力発電の一つとされる。同地区を管轄するサウス・レークランド地区評議会は、風力発電事業者から申請のあった「10年間の延長」の要請を却下した。
同風力発電事業は湖水地方自然公園の境界線から、約800m離れた荒地に建設されている。1992年に発電許可を得ており、来年の8月26日で期限が来る予定だった。自然風景が魅力の湖水地方に登場した高さ140フィート(約42.6m)の風車の行列に対して、これまでも地元の「Friends of the Lake District(FLD)」や「Open Spaces Society(OSS)」などが景観を台無しにしていると、撤去運動を展開してきた。
FLDのLaura Fiskeさんは「今回の地域評議会の決定は、今後、許可期限が来る他の風力発電事業の延長を阻止するうえで極めて有効だ。1990年代に政府が無謀に推し進めた事業の影響を受け続けた地域の住民とわれわれによる、長年にわたる努力が実を結んだ」と評価している。
OSSのKate Ashbrook氏も「風車は湖水地方自然公園の景観を阻害するのはもちろん、風車の建設場所は、公益の共有地であり、そのへの自由な人の立ち入りを制限してきた。風車を撤去した後は、風車に占領されていた共有地を復活させ、自然を復活させる必要がある」と述べている。
一方、風力発電事業協会の「Renewable UK」は、風力発電事業の事業者のInnogy社が、稼動延長を上部機関のPlanning Inspectorateに提訴する考えである、と述べている。英国政府は昨年から陸上の風力発電の建設に対する補助金を停止し、洋上風力の建設促進に政策を転換している。
湖水地方の風力発電は撤去の方向性が示されたが、地域によっては稼動期間が切れるタイミングで、旧来の風車をより巨大な風車に置き換える判断も行われている。湖水地方と同じく、1991年に建設されたCornwall地方のDelabole では10基の旧式風車をほぼ倍の高さの4基の巨大風車に置き換えられたという。