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リニア中央新幹線談合事件、幹部逮捕の大成・鹿島を、GPIF採用のMSCI、FTSEの両日本株ESG指数は「ESG優良企業」と評価。ESG投資のあいまいさ露呈(RIEF)

2018-03-02 17:08:04

taiseiキャプチャ

 

   リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社による談合事件で、東京地検特捜部は、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で、大成建設の元常務執行役員と鹿島建設担当部長を逮捕した。リニア新幹線自体のあり方が依然、議論になる中で、大手企業の不十分なガバナンス体制が露呈した格好だ。両社はESG投資でも高評価を得ていたことから、ESG評価の甘さ、不十分さを図らずも浮き彫りにした。

 

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は昨年夏、ESG投資促進を鳴り物入りで打ち出し、日本株のESGインデックス運用として3つの指数を選定した。そのうちの一つ、MSCIの「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」では、今回、談合事件を引き起こした4社がすべて「ESG優良企業」として盛り込まれている。同社のESG格付けでは、談合を認めた大林組がAA、同じく清水建設がA、談合を認めず、幹部社員が逮捕された鹿島と、大成はともにAの評価をつけている。

 

 MSCIの同指数の構成銘柄では、昨年秋以降にデータ偽装や改竄等の発覚した神戸製鋼、三菱マテリアル、日産自動車などが軒並み含まれており、ESG評価のうち、とりわけガバナンス評価の甘さが問題視されていた。http://rief-jp.org/ct6/73464

 

 taisei2キャプチャ

 

 また同じくGPIFに採用されたESG指数の「FTSE Blossom Japan Index」にも、ゼネコン4社のうち、大成、鹿島、大林の3社が構成銘柄に含まれている。FTSEの場合、ESG評価の総合評価のスコアリングが3.1以上の銘柄を組み入れ、2.7未満になると除外の可能性が出る、と説明している。現在、公表されているデータによると、大成建設(2.8)、大林組(2.9)、鹿島(2.5)といずれも基準を下回っており、鹿島は除外対象のスコアになっているが、いまだ除外されていない。

 

 また談合を認めて公正取引委員会に自主申告した大林組と清水建設の両社のうち、清水建設は指数の対象外となっている。G以外のESのスコアが悪かったのか、どうか。不明である。

 

 FTSEキャプチャ

 

 今回発覚したゼネコン各社の場合も、問題はガバナンスである。ガバナンスは通常、信用格付け会社の企業評価の軸になる項目であり、ESGの3分野を同様のスコアリングで配点・評価する手法になじまないとの指摘が以前からある。そもそも、環境のEと社会のSにしても、同じ尺度で評価できるわけではない。ESGを一まとめにして、「優良企業か否か」という評価をするのは、乱暴ともいえる。

 

 グローバルな機関投資家49社を対象としたあるコンサル会社の投資家調査によると、外部のESG評価会社の格付け評価が投資家行動にどう影響するか、という質問に対して、「高い影響がある」との答えは、わずか5%。過半の51%の回答は、「低い影響でしかない」としている。プロのグローバル機関投資家は、「ESG投資」というネーミングに惑わされずに、評価会社自体の実力も見抜いていることがわかる。

 

 ただ、わが国では、「ESG投資」「GPIFが採用」といったキャッチフレーズが先行し、結局は利回り重視で、低ガバナンス企業をわんさと構成銘柄に盛り込んでも、投資家も気付かない、という構造のようだ。欧米の指標会社や資産運用会社等にとっては、GPIFなどの大口機関投資家を含めて、「イージーマーケット」と見下されている可能性も指摘されている。

https://www.msci.com/msci-japan-esg-select-leaders-index-jp

http://www.ftserussell.com/blossom_japan