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環境省版「グリーンボンド」。資金使途のグリーン事業は「50%超」でOK。「100%グリーン」な国際基準を大幅緩和。将来は「グリーンボンド」とみなされないリスクも。発行体に5000万円まで補助金を大盤振る舞い(RIEF)

2018-06-05 18:39:44

MOEキャプチャ

 

   環境省は同省が公表する「グリーンボンドガイドライン」を採用してグリーンボンドを発行する事業者の外部コスト支援の事業を開始したと発表した。支援事業は調達資金の50%以上を国内低炭素事業に振り向ければいいとするなど、100%をグリーン事業に投じることを基本とする国際市場基準よりも、大幅に緩い。しかし、補助金は一件当たり最高5000万円と、破格の大盤振る舞いで、補助金で「二流ボンドの発行」を募る格好だ。

 

 環境省の委託で同省の外郭団体の「ファイナンス推進機構」(東京)が、グリーンボンド発行体向けに公募を開始した。通常、グリーンボンドの発行にかかる追加的費用は、第三者によるセカンドオピニオンの付与や、発行前のコンサルなどでは百万円から数百万円レベルとされる。これに対して、同機構の募集内容では、外部レビューの付与またはグリーンボンドコンサルティングを対象に、どちらの場合でも上限額5000万円、補助率は補助対象経費の100%としている。

 

 通常のセカンドオピニオンやコンサル料金を10倍以上も上回る補助金の交付がどのような算定に基づくものかは開示されていない。また、補助金の対象となるグリーンボンドの要件について、調達資金の50%以上が国内低炭素化事業に充当され、使途先のグリーンプロジェクトの件数も50%以上が国内低炭素化事業であることなど、グリーン事業への資金使途は調達資金の半分でもいい、とした。

 

 この点は、ボンドの対象資産の確保に苦しむ発行体の意向を汲んだ形だ。だが、残りの50%についての使途限定の規定がみられないことから、場合によっては残りの資金が石炭火力発電資金に投じられた場合でも、「グリーンボンド」となるリスクがある。残りの資金使途の情報開示が成されるかも不明だ。

 

 すでにグローバル市場での国際基準となっているグリーンボンド原則(GBP)や、Climate Bonds Initiative(CBI)などの場合、調達資金は100%グリーンプロジェクトに投じるのが基本だ。GBPを踏まえて独自のガイドラインを整備した東南アジア諸国連合(ASEAN)のグリーンボンド基準(ASEAN GBS)なども、「100%グリーン」。また、現在、国際的には、欧州委員会がEU共通のグリーンボンド原則の整備を進め、国際標準化機構(ISO)もグリーンボンド規格化作業を進めているが、いずれも、資金使途は「100%グリーン」を目指しているとされる。

 

 仮に、来年中にも国際的なグリーンボンド基準・規格が登場すると、資金使途の半分程度しかグリーンプロジェクトに投じない環境省版のグリーンボンドは、国際的には「グリーンボンドに該当しない」評価を受ける可能性もある。そうなると、グリーン投資を目指して購入した投資家は、投資額の半分しかESG評価ができない、あるいは残りの資金が反環境分野に投じられていると、反ESG投資に転じてしまうリスクもある。

 

 元々、同省のガイドラインは、GBPが基本原則とする4つの基本要因をすべて満たさなくてもグリーンボンドとみなすという、「GBP勝手解釈」をとっている。しかし、GBPの基本要因は4要因一体の最小必要原則(minimum standards)であり、その点でも、同省ガイドラインのグリーン性は低い、と指摘されてきた。今回、資金使途先基準までも緩めたことで、「グリーン性」はさらに低下したといえる。「グリーン」をどんどん薄める一方で、破格の補助金をつぎ込もうとする同省の狙いは何だろうか?

 

http://www.env.go.jp/press/105471.html