HOME |「CSR優良企業」のオムロン、欧州の環境基準を満たしていない電気機器を「基準適合」として国内出荷。日本の規制の甘さを"悪用”か(各紙) |

「CSR優良企業」のオムロン、欧州の環境基準を満たしていない電気機器を「基準適合」として国内出荷。日本の規制の甘さを"悪用”か(各紙)

2018-06-08 21:36:23

 

 CSR優良企業として知られるオムロン(京都)が8日、環境基準を満たしていないパソコン向け電気機器5機種を、基準適合品としてを出荷していたことが明らかになった。5月中旬の社内点検で発覚し出荷を停止したが、事実関係は公表しておらず、同日、記者会見した山田義仁社長は「発表が遅れて深く反省している」と陳謝した。

 

 発覚したのは、停電や電圧の低下が起きても安定的に電気を送り続ける無停電電源装置(UPS)。パソコンやモニター向け製品のうち、出力容量210~720Wの小型5機種。医療や発電所塔など電気の安定供給が不可欠な現場でバックアップ電源としても使われているという。

 

 オムロンは対象機種を、鉛や水銀など有害物質の使用量を制限した欧州連合(EU)の「RoHS指令」に適合した製品、として国内で販売した。だが実際は管理工程外の原材料が一部混入した部品を使っており、同基準を満たしていないのに出荷したという。

 

 OMRON2キャプチャ

 

 日本では有害物質規制が甘く、RoHS基準に準じた国内での明文規制がない。このため、日本企業向けに同製品を出荷しても日本の法令違反にはならない。しかし、同社は顧客に対して「RoHS指令の適合品」として売っていたという。そうだとすると、CSRの視点から明らかに逸脱しているほか、顧客からは契約違反を理由に損害賠償請求を受ける可能性がある。

 

 オムロンは5月17日以降、対象5機種の出荷を停止、店頭在庫も回収した。6月中旬にはRoHS指令に適合した製品に切り替えて出荷を再開するという。ただ、出荷済みの対象5機種については「健康被害が出る可能性がなく、そのまま使い続けても問題ない。要望があれば取り換えに応じる」と、自社から顧客に説明する考えのないことを強調している。

 

 オムロンはこれまでCSRを重視した経営を強調、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・ワールド・インデックス(DJSI World)やFTSE4Good株式指数などの各種のESG指標の構成銘柄に選定されているほか、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が昨年夏から始めた日本株の3つのESG指数のすべてにも優良銘柄として採用されている。

 

 2017年度には、経済産業省主催の「新・ダイバーシティ経営企業100選」と「なでしこ銘柄」をダブル受賞したほか、日本経済新聞社の「日経アニュアルリポートアウォード2017」でもグランプリを受賞するなど、ESG、コーポレートガバナンス等の分野で多くの表彰を受けている。

 

 同社のコーポレート・ガバナンスポリシーによると、「企業は社会の公器」と位置付け、「企業理念」として「われわれは誠実であることを誇りとし、人間の可能性を信じ続けます」と明記している。情報開示の基準では、「公正かつ透明性の高い経営の実現を目指し、積極的に情報開示を行う」としているが、実態は違った。

 

 同社の新中期経営計画(VG2.0)では「質量兼備の地球価値創造企業」を標榜している。

https://www.omron.co.jp/about/corporate/governance/policy/