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日揮と産業技術総合研究所グループ、太陽光発電の電力で製造した水素を使って、アンモニア合成、ガスタービン発電に成功。水素エネルギー社会化へ一歩前進(RIEF)

2018-10-23 18:17:35

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 プラント事業を展開する日揮(横浜市)は産業技術総合研究所(東京都)と共同で、太陽光発電の電力を利用して製造した水素を原料としてアンモニアを合成、その合成アンモニアを燃料としたガスタービン発電に成功した。日揮は、再エネ電力から合成アンモニア燃料によるガスタービン発電は世界で初めて、と強調している。

 

 共同研究グループは、福島県郡山市にある産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所で実証実験を行った。同所にある太陽光発電設備で発電した電力で、水の電気分解を行って、水素を製造。その水素を用いてアンモニアを合成し、合成したアンモニアを燃料にガスタービン発電試験(発電量47kW)を実施した。

 

 水素製造から発電に至るまでCO2を排出しないアンモニア(CO2フリー)活用のエネルギーチェーンの確立に前進したことになる。日揮は、2014年から「新規アンモニア合成触媒および再生可能エネルギーによる水の電気分解で得られた水素を原料としたアンモニア合成プロセス」の研究開発を進めており、今年5月には、低温・低圧下で効率的にアンモニアを合成できる新たなルテニウム触媒の開発に成功している。

 

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 今回、この触媒と、一時的な水素供給用に設置した高純度水素ガスボンベを用いてアンモニアを合成する実証試験(アンモニアの生産能力日量20kg)を行った。実証試験で、触媒が、低温・低圧で高い活性を有することを確認するとともに、再エネの使用時に課題となる急な運転条件の変更によるアンモニア製造量の変動に対応できることも検証できた、としている。

 

 現在、アンモニアの合成は、主に、天然ガスを原料に、水蒸気と空気を用いて改質して得られる水素と窒素を高温・高圧の触媒反応でアンモニアに転換する「ハーバー・ボッシュ法」によって行われている。この方法では天然ガスから水素を製造する過程で大量のCO2を排出する。

 

 これに対して、太陽光などの再エネで水素を製造する方法では、CO2排出量はゼロとなる。だが、製造された水素は低圧で、高温・高圧下でアンモニアを合成する「ハーバー・ボッシュ法」で使用するには、高圧化に伴うエネルギーが必要となり、エネルギー効率の低下が課題となっていた。

 

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 しかし、新たに開発したルテニウム触媒を使うと、低温(約400~500度・低圧(14~30メガバスカル)の条件でもアンモニアの合成が可能になった。実証試験で、触媒の活性性能と、再エネ使用時の運転条件の変更課題の克服も検証できたことで、日揮グループは今後、アンモニアの製造コスト低減に向けた開発を続けていく、としている。

 

 政府は、2030年までに日本が革新的で低炭素な水素エネルギー社会を実現し、水素関連産業で世界市場をリードすることを目指す政策目標を掲げている。アンモニアは成分中に水素を多く含むことから、水素エネルギーキャリア(水素を液体にしたり水素化合物にして、効率的に貯蔵・運搬する方法)としての優位性があり、水素エネルギー普及につながると期待されている。

 

 さらにアンモニアは、液化が容易で、アンモニアのまま直接燃焼させることができるほか、燃焼時にCO2を出さない点も大きい。現在も、肥料原料などに幅広く利用されており、すでにサプライチェーンシステムが社会に確立されているなどのメリットがある。

http://www.jgc.com/jp/ViewPdf/view/2064