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東芝、タンデム型(二階建てセル)太陽電池の低コスト化に成功。亜酸化銅使用。太陽光発電の高効率化を促進(RIEF)

2019-01-22 12:33:26

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 東芝は、異なる性質の太陽電池(セル)を重ね合わせ、太陽光の発電効率を上げる「タンデム型」太陽電池の実用化に向け、世界で初めて亜酸化銅(Cu2O)を用いたセルの透明化に成功した、と発表した。Cu2Oは地球上に豊富に存在する銅の酸化物で、低コスト化が期待できる。

 

 東芝によると、今回開発した透過型Cu2O太陽電池は短波長光を吸収して発電し、長波長光を約80%透過できる。透過型Cu2O太陽電池をトップセルに用い、現在広く普及している結晶シリコン(Si)太陽電池をボトムセルに用いることで、長波長光で高効率に発電し、全体として、短波長から長波長まで幅広い波長の光をエネルギーに変換できるという。低コストで高効率なタンデム型太陽電池が実現できる。

 

 東芝は、政府が昨年7月に決定した第5次エネルギー基本計画では、太陽光発電を2030年の主力電源の一つに定めているが、太陽光発電の場合、パネルを設置する面積の確保が課題となる。”二階建て”のタンデム型の場合、限られた設置面積を有効利用できるため、利用が」増えるとしている。

 

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 タンデム型は、透過型のCu2O太陽電池太陽光を上層のトップセルに使い、結晶Si単体の太陽電池をボトムセルに使うことで、現在普及している結晶Si単体の太陽電池より、高い発電効率が期待できる。現在タンデム型では、ガリウムヒ素半導体などを用いたものが製品化されており、市販の結晶Si太陽電池と比べて1.5倍から2倍高い30%台の発電効率が報告されている。ただ、製造コストが結晶Si単体の場合よりも、数百倍~数千倍と高いという課題がある。今回の透過型Cu2O利用の場合、そうしたコストのカベを打破できる。

 

 またコスト対策に加えて、結晶Siとは異なる波長域の光を吸収して発電するため結晶Siの発電が殆ど阻害されないという特徴もあるという。Cu2Oは酸化銅(CuO)や銅(Cu)といった不純物相が生成しやすく、かつ混ざり合いやすい性質がある。この点については、Cu2Oの薄膜を形成するプロセスで、酸素の量を精密制御する独自の成膜法を適用し薄膜内部でのCuOやCuの発生を抑え、Cu2Oの透明化を実現した。

 

 同技術を用いて試作したプロトタイプのタンデム型太陽電池の実験では、ボトムセルに用いた結晶Si太陽電池が、単体で発電させた場合の約8割の高出力を維持して発電できたという。

 

 東芝では、今回開発した技術を、今後、蓄電池と組合せた自家発電システム、地域ごとの分散電源、これらを統合し電力需給バランスを調整するエネルギーアグリゲーションなどの新たなグリーンエネルギー事業への展開を目指すとしている。さらに、3年後に透過型Cu2O太陽電池をトップセルに適用した、低コストなタンデム型太陽電池の完成させ、効率30%台の発電の実現を目指す。

 

http://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/1901_01.htm