HOME9.中国&アジア |シンガポールに、アジアのサステナブルファイナンス市場育成の「Asia Sustainable Finance Initiative(ASFI) 」設立。同地をSFの国際ハブセンター化に。東京は負けてしまうかも(RIEF) |

シンガポールに、アジアのサステナブルファイナンス市場育成の「Asia Sustainable Finance Initiative(ASFI) 」設立。同地をSFの国際ハブセンター化に。東京は負けてしまうかも(RIEF)

2019-01-23 21:43:13

Asia1キャプチャ

 

 アジアのサステナブルファイナンス市場の育成・発展を目指す「Asia Sustainable Finance Initiative(ASFI) 」がシンガポールに設立された。ASFIはアジア地域を持続可能な経済社会制度に切り替えるためには、2030年までに5兆㌦(約550兆円)の投融資資金が必要とし、そうした市場のニーズに、金融機関と金融市場が応えられるように、アジアの金融機関の支援を展開するとしている。シンガポールをサステナブルファイナンスのアジアでのハブセンターにする狙いが明確にある。

 

 ASFIは、環境団体WWFの積極的なバックアップによって立ち上がった。WWFシンガポールが事務局機能を担う。支援者には、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)、Asia Investor Group on Climate Change、CDP、Centre for Governance Institutions and Organisations、世界資源協会(WRI)、」仏気候NGOの2°Investing Initiatitge、シンガポール国立大学、オックスフォードサステナブルファイナンス、Global Canopyなどの官民団体が名を連ねている。

 

  当面は、アジアの金融機関のサステナブル力を高めるため、国連支援の責任投資原則(PRI)や、国連環境計画が推進する「責任銀行原則
(PRB)、持続可能な保険原則(PSI)、 Science Based Targets(SBT)、さらには金融安定理事会の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)等への参加、受け入れを支援する。

 

 活動の中心テーマとして、金融機関が支援すべき6つの領域を明示している。①標準化②研究・ツール③エンゲージメント④グリーンファイナンス・ソリューション⑤規制とガイドライン⑥キャパシティビルディング、である。

 

   ASIFでは域内の金融機関がPRIやPRBなどに参加することで、サステナビリティを金融機関の経営方針に組み込むことを促す。一方で、アジア地域は低炭素経済社会への移行に向けて、グリーン&サステナブルファイナンスの一大市場に変貌する期待も高まっている。アジアでのサステナブルファイナンス市場のハブセンター競争では、香港とシンガポールが競っている。香港が中国本土との連携を深めているのに対して、今回のASFIの場合、シンガポールの証券取引所(SGX)、シンガポール金融通貨局(MAS)の支援を受けて、東南アジア(ASEAN)から、東アジアも睨んだサステナブルファイナンス市場の幅広いネットワーク作りを志向しているとみられる。

 

  アジアでのCSRやESG活動については、長年、香港をベースとするAssociation for Sustainable & Responsible Investment in Asia(ASrIA)が知られる。ただ、同組織は現在、国連支援のPRIの香港支部組織に統合された形になっている。つまり「香港派」というわけだ。

 

 ASFIのスポークスパーソンを務めるWWFのサステナブルファイナンスの責任者のJeanne Stampe氏は「WWFはアジア地域だけで33人のサステナブルファイナンスの専門家を抱えている。ASFIではこれらのスタッフに加えて、各国の金融機関や学界、研究者らの専門家にもネットワークを広げて、アジアの金融市場全体のサステナビリティシフトを推進したい」としている。NGOプラス政策連携を目指すという。

 

 サステナブル社会への移行には、気候変動対策のみならず、食糧、エネルギー、水資源等の安定的確保等が課題となる。経済成長の著しいアジア地域だが、これらのインフラ建設には膨大な資金が必要で、国レベルの資金だけでは対応しきれないとみられる。サステナブルファイナンス市場が拡大すると、民間金融機関によるアジア全域への投融資が進む期待がある。

 

 Stampe氏は「アジアはサステナブルな社会への移行のために、5兆㌦の投資資金を必要としている。その資金を捻出するためには金融セクターが重要な役割を果たす」と指摘している。またASFIの役割として、サステナブルファイナンスに関する知識の普及・移転をあげている。「われわれはブローカレッジ機能を果たすのではなく、また単なるプラットフォームづくりでもない。資金運用機関やウェルスファンド、金融機関等と直接行動を共にする」と語っている。


 この後、シンガポール政府投資公社(GIC)や政府系の投資機関であるTemasekなどの実際の実務部隊が、ASFIとどう連携をとっていくのかが活動の影響力を左右するともいえる。Stampe氏は「GICやソブリン・ウェルシュファンド等の活動への参加は歓迎する」と述べるとともに、機関投資家の参加がカギを握るとの意向を示している。

 

 最大の課題は、パーム油植林による熱帯雨林の減少など、アジアが抱える豊富な「自然資本」の価値評価が不十分で、長期的に見ると、経済界も、国家も、社会も、リスクを抱え込む可能性があるためとしている。ASFIは、域内の金融機関に対して、こうした自然資本を左右するリスク認識を進めるとともに、2030年までにアジア地域だけで総額5兆㌦に達するとみられる低炭素型インフラ投資機会を、アジアの金融機関が積極的に受け入れていくための支援活動を想定している。

 

https://www.asfi.asia/