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東電福島原発廃炉費用試算、FGWは7兆円、GSは7000億円。その違いは?(FGW)

2011-03-31 13:47:38

東京電力の勝俣恒久会長が福島第一原子力発電所の廃炉化を認めたことで、廃炉費用への関心が高まっている。FGWは先に7兆円規模と報じたが、日本経済新聞の3月31日の報道では、米ゴールドマサックス証券は7000億円と試算しているという。その違いを検証してみる。

まず、われわれの試算は福島第一の1~6号機全体を廃炉対象とした場合とし、過去の商業用原子炉の平均廃炉費用のうち高めの値となっている英国の数字をベースに、米会計検査機関のGAOの事故原発の場合の基本的な推計方針を加味した。http://financegreenwatch.org/jp/?p=857

GSの試算については、日経新聞の報道しか材料がないが、対象となる原発は第一だけではなく、第二も含めた10機として、7000億円と推計している。すると1機当たり700億円となる。これは我々が厳しめにみている英国の平均費用とほぼ同じ。

 ただ、われわれがすでに指摘しているように、これらの平均費用は、平時に段階的に廃炉にする場合の費用で、今回のように想定外の事故による廃炉の場合は、当然、平均を上回るとみるのが適切である。日経の記事も「事故処理が難航すれば、1兆円を超える費用がかかる可能性も否定できない」と述べている。ただ、この可能性がGSの指摘なのか、日経の記者の指摘なのかが、原稿からはよくわからないが、いずれにしてもGSは平時の平均的な廃炉費用に基づいた試算であり、極めて保守的な推計であることがわかる。

 むしろ、GSの指摘で重要なのは、廃炉対象を第一の6機だけでなく、第二の稼働中の4機も含めている点である。福島原発を廃炉処分する際、最悪の場合、チェルノブイリ原発の時のように、燃料棒の取り出しができないまま封じ込めざるを得ないリスクもある。すでに、放射性物質は40㎞圏でも基準を上回って検出されている。そう考えると、それよりも距離の近い第二の4機も廃炉対象になる可能性はあるといえる。

事故時の廃炉費用が膨らむ最大の理由は、放射性物質で汚染されて立ち入り禁止区域となる範囲の不動産・建物に対する損害賠償(買い上げ)費用が発生するためで、GAOはそうした費用が全体の廃炉費用の76~90%を占めるとみている。

これらのことから、われわれの推計も、福島第一、第二の全10機を廃炉にするとした場合は、既報の最大7兆円から10兆円に膨らむとみたい。東電の自己資本は約2兆9400億円だから、仮に廃炉費用がわれわれの推計の半分で収まっても、債務超過に陥ることになる計算である。