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経団連、EUやISOで進むサステナブルファイナンスのタクソノミー(グリーン事業の分類)規格化・基準化に反対を明言。イノベーションを阻害、など指摘(RIEF)

2019-09-19 08:19:36

keidanren1キャプチャ

 

 日本経団連は、EUや国際標準化機構(ISO)が現在取り組んでいるサステナブルファイナンスの規格化・基準化に反対する声明をまとめた。国の経済団体として、こうした規格化作業に反対姿勢を打ち出すのは珍しい。経団連の反対見解は、両規格化作業の軸になっているグリーン事業を評価・分類するタクソノミー(事業分類)への警戒感に基づくようだ。

 

 経団連の見解によると、「サステナブルファイナンスは、特に気候変動分野における民間投資の拡大を目指すものである一方、恣意的な政策誘導によって、気候変動分野に留まらない広範な政策領域に多大な影響が及ぶリスクも孕んでいる」と位置付けている。

 

 特にEUが現在、技術専門家グループ(TEG)で作業を進めているタクソノミー基準化について、①「サステナブル」の判断は環境側面だけで、総合評価に立脚すべき②民主導の非連続的なイノベーションを阻害してはならない③拙速な国際標準化や国際金融規制への活用に反対――としている。

 

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 このうち①については、「環境側面だけに着目し、特定の経済活動・技術・製品を一律に『サステナブル』かどうかを判断することは、より広範なSDGsの実現の観点から適切でない。『サステナブル』の判断は、環境側面に加え、エネルギーのS+3E(安全性+安定供給、経済性、環境性)のバランス確保や、当該技術・製品の導入可能性・普及ポテンシャルなどの多面的要素を考慮した総合評価に立脚すべき」と指摘。

 

 ②では、「地球規模・長期の気候変動対策のカギを握るのは、民主導の非連続なイノベーション」とし、そのイノベーションの芽は予見不可能なので、現段階から将来のあらゆる選択肢を残しておくことが不可欠、と強調。EUのタクソノミーが示す「グリーンリスト」を予め固定化すると、「既存の技術や設備のエネルギー効率改善・低炭素化に向けた投資が阻害され、事前にリスト化できない非連続なイノベーションの芽も摘まれかねない」と懸念を示している。

 

 ③では、タクソノミーについて、「基本的な概念は世界共通化し得るかもしれない。だが、適格か否かの具体的な判断基準は、各国がそれぞれの国情に応じて、柔軟に定めるべきもの」と、「日本流」を主張、国際規格化に反対の立場を示している。

 

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 そのうえで、現在、国際標準化機構(ISO)がEUタクソノミーを踏まえた国際標準化の議論をしていることに言及、「各国の発展段階や地理的条件、エネルギー事情等が大きく異なる中、EU域外の国の考え方が十分反映されていないタクソノミーを国際標準化し、世界各国に画一的に適用することは、途上国を含む世界の持続的発展を妨げる恐れがあり、強く反対する」としている。

 

 さらに一部で、銀行の自己資本比率に関する基準を定める国際的なバーゼル規制や各国・地域の規制において、保有資産額のリスクウェイトの算定に、EUタクソノミーを活用すべきとの議論があると指摘、そうした議論にも反対の姿勢を示した。

 

http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/069.html

http://www.keidanren.or.jp/en/policy/2019/069.html