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三菱商事、新規の石炭火力発電事業への取り組み停止を宣言。既存の石炭火力事業の同社持ち分も削減方針。ただ開発中案件は継続。主要商社の新規石炭火力事業撤退の方針出そろう(RIEF)

2019-10-25 20:18:17

mitsubishishouji2キャプチャ

 

 三菱商事は気候変動の影響を受ける発電事業について、「石炭火力発電事業は、すでに開発着手案件を除き、新規事業には取り組まない」方針を示した。さらに、「2℃シナリオ」を目指すシナリオ分析に沿って、既存の石炭火力事業の同社持分についても削減を目指すと宣言した。再生可能エネルギー事業については、発電量に占める再エネ事業比率を2030年までに20%超とする目標を掲げた。

 

 同社はこれらの方針について、プレスリリースはせず、「ESGデータブック2018」の改訂版の中で、「そっと」開示した。

 

 新規石炭火力発電事業の取り組みを行わないという方針は、すでに三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事等が表明しており、三菱商事の対応でに主要商社の足並みがそろったことになる。

https://rief-jp.org/ct10/84172

https://rief-jp.org/ct4/87034

https://rief-jp.org/ct4/82807

 三菱商事の方針に対して、FoEJapanや気候ネットワーク等の環境NGOは「 新規石炭火力事業に取り組まない方針」は歓迎するが、「既存の開発着手案件」の継続は、気候変動対策として不十分、と指摘。同社がアジアで進めている案件の即時停止を求める共同声明を出した。

 

 mitsubisishouji1キャプチャ

 

 三菱商事によると、昨年9月末時点で同社が世界全体で稼働中の持分発電容量は約570万kW。送電事業の送電網は約1000km(送電容量約500万kW)に達している。同社の2℃シナリオ分析では、今後の発電事業環境では火力発電が低下、再エネを主力電源として捉える政策がグローバルに広がるとしている。

 

 こうした分析を経て、火力発電事業は石炭火力から、環境負荷のより低いガス火力事業と、上流の天然ガス事業との連携を図る、としている。すでに保有する既存の石炭火力については、同社の持ち分を削減するともに、燃料転換やバイオマス混焼比率の引き上げ等を進めるとしている。

 

発電事業のシナリオ分析による将来の推移見通し
発電事業のシナリオ分析による将来の推移見通し

 

 発電燃料としての一般炭の開発事業については、2℃シナリオによると、石炭火力から再エネ・ガス火力に大幅な転換が進む中で需要減少が進む一方で、コスト・地政学的観点から途上国等に一定程度需要は残るとみている。このため、一般炭権益はすでに一部売却等を進めている。ただ、製鉄原料用の原料炭の需要は、新興国を中心に需要は堅調に推移するとしている。

 

 三菱商事の「脱石炭」方針に対して、環境NGOは共同声明で、「新規の石炭火力発電事業には取り組まない方針」は歓迎されるものの、「既に当社として開発に着手した案件」の継続は、気候変動対策として不十分であると言わざるを得ない、と指摘。

 

 NGOらは、同社の「開発着手案件」として、ベトナムの2つの石炭火力発電事業(ブンアン第2石炭火力発電事業およびビンタン第3石炭火力発電事業)、国内では福島県の広野と勿来で開発されているIGCC(石炭ガス化複合発電)の計4案件を指摘。特にベトナムの案件は発電容量がそれぞれ1200MWと1980MW、日本の案件もそれぞれ540MWと規模が大きく、CO2の排出増加を後押しするのは明らか、と批判している。

 

三菱商事が建設に関与しているベトナムのバンフォン第2石炭火力発電所
三菱商事が建設に関与しているベトナムのブンアン第2石炭火力発電所の完成予想図

 

 また、石炭火力発電所の新規建設は、パリ協定との整合性が確保できないことが国連機関や国際エネルギー機関(IEA)等から指摘されていることも強調している。

 

https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/esg/

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/va/191021.html