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大林組、洋上風力発電設備の風車建設技術を開発。着床式と浮体式の両方。洋上風力発電事業の市場拡大を見込む(RIEF)

2019-11-14 12:18:16

Ohbayashi3キャプチャ

 大林組は、洋上風力発電の着床式と浮体式の2方式での風車の建設技術を確立したと発表した。着床式では、風車を海底に固定するアンカーに「スカートサクション」を採用した方式を、浮体式ではコンクリート製浮体を海底地盤に緊張係留する「テンションレグプラットフォーム型」を開発、それぞれ一般財団法人日本海事協会(Class NK)からの設計基本承認を取得した。

 (写真は、着床式の実証実験を行う作業船)

 わが国での洋上風力発電事業は、漁業権等との調整が課題となってきた。だが、今年4月に再エネ海域利用法が施行されたことで、各地で開発計画が進んでいる。大林組では洋上風力発電事業の設置場所の状態に応じて、両方式の建設技術をアピールしていく方針。

 今回開発した着床式の「スカートサクション」方式では、実物大の設備を実際に洋上に設置し、さらに撤去作業にも成功した。スカートサクションは、海底に着床する頂版と、そこから下に伸びた円筒形の鉛直壁(スカート)で構成する。

ohbayashi1キャプチャ

 スカート内に水をゆっくり流入させることで生じる受働サクション(スカート内が静水圧以下となること)を利用することで、海底に貫入させた際の引き抜き抵抗を増大させる。従来方式に比べ3倍の抵抗力を生み出す。また従来の着床方式では、杭打ち等の大型機械が必要になったが、サクション方式では無振動・無騒音で作業が可能。

海底に設置されるスカートサンクションの実物
 

 同社では、今回、全高33m、スカート長さ8m、スカート径12mの実物大設備を、水深13mの海中に設置し、約2週間にわたって、基礎に及ぼす波力や、それに対する基礎の応力、変位・傾斜角などを計測するなどの調査をした後、基礎を完全撤去する作業を実施した。

 一方の浮体式では、コンクリート製浮体を海底地盤に緊張係留する「テンションレグプラットフォーム型 浮体式洋上風力発電施設」を考案した。緊張係留とは、浮体構造物を余剰浮力によって生じる緊張力を利用して海底地盤に固定することをいう。

浮体式の係留方式

 従来方式(カテナリー方式)に比べ、海域の専有面積が小さいほか、生態系への影響の減少、係留材の使用の削減、洋上風力の動揺の減少などのメリットがある。課題としては、大型アンカーが必要になるため、設置コストが増える点が指摘されている。

 同社では、テンションレグプラットフォーム型の浮体式洋上風力発電についても、一般財団法人日本海事協会から、AIP(設計基本承認)を取得したことで、同方式の風車建設がこれまでの机上での検討段階から実現に向けた一歩を踏み出した、と評価している。

https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20191113_1.html

https://www.obayashi.co.jp/news/detail/20160218_1.html