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熊谷組、微生物を利用してCO2からエチレン生産技術を開発。CCU(カーボン回収利用)技術の一環。石油以外「CO2化学」分野を創出する可能性も(RIEF)

2019-12-02 16:49:19

kumagai2キャプチャ

 熊谷組は、CO2を原料にして微生物反応で化成品原料のエチレンを製造する技術を開発した、と公表した。従来、合成樹脂や石油化学製品の原料となるエチレンは、主に石油のナフサ分解によって生産されてきた。CO2からの生産が可能になると、CO2排出量を大幅に削減できるほか、新たに「CO2化学」という産業分野の創出も期待できる、としている。

 同社の開発技術は、地球温暖化を加速するCO2を、大規模発生源から回収して有効利用するCCU(Carbon Capture and Utilization)技術と位置づけられる。これまでにCCUは人工光合成・藻類などのバイオプロセスによる技術開発が注目されているが、CO2を削減する処理能力や有用物質生産効率等の面で課題があり、実用化には至っていない。

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 今回、同社が開発した技術は人工光合成・藻類などとは違う新しいバイオプロセスとして、鉄酸化細菌(Acidithiobacillus ferrooxidans: AF-WT)を利用してCO2を原料に主要化成品原料となるエチレンの生産技術を開発した。CO2を炭素源として生育する鉄酸化細菌にエチレン生成酵素(EFE)遺伝子を導入し、CO2利用エチレン生産鉄酸化細菌組換え株(AF-rEF1)を作り出したという。

 高濃度CO2を封入し14日間、培養した結果、AF-WTではエチレン生産は認められないが、開発したAF-rEF1ではエチレンガスの発生を確認できたとしている。今後、3年後をメドとして、10~100㍑の培養を確認して、小規模試験生産に入ることを検討するとしている。

 鉄酸化細菌の培養は課題だが、通電型培養装置を使用した電気培養技術(電力中央研究所特許技術)を適用することで、菌体密度を試験管培養に比べて、約100倍ほど高密度化ができるという。さらに、電子供給による還元力の付与することで、CO2の変換効率を高めることが可能、としている。

通電型培養装置(エチレン製造装置)
通電型培養装置(エチレン製造装置)

 鉄酸化細菌の電気培養には大きな電力は不要であり、再生可能エネルギーなどのCO2フリー電力を利用できる。つまり、CO2を原料化するだけでなく、生産プロセスでもCO2排出量削減効果が期待できるとしている。同社では、これら開発技術を基に、CO2有効利用の基盤となる技術として特許「エチレン生産方法およびエチレン製造装置」(特開2019-154435)を出願した。

 現段階では鉄酸化細菌によるエチレンの生産性はまだ低い。このため、今後は、高効率なCO2利用エチレン高生産性鉄酸化細菌組換え株の構築および通電型培養装置を利用したエチレン生産システムの開発にさらに取り組む、としている。こうした課題解決や開発加速のために、茨城大学、芝浦工業大学と共同研究契約を結び、電力中央研究所を加えた4機関での研究開発体制を築いた。

https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2019/pr_20191202_1.html