HOME8.温暖化・気候変動 |仏経済学者のジャック・アタリ氏、日本政府の石炭火力発電推進策を「犯罪行為に等しい」と批判。背景に、将来を顧みない「個人主義(Me First)」現象の広がりを指摘(各紙) |

仏経済学者のジャック・アタリ氏、日本政府の石炭火力発電推進策を「犯罪行為に等しい」と批判。背景に、将来を顧みない「個人主義(Me First)」現象の広がりを指摘(各紙)

2019-12-17 11:48:37

Atariキャプチャ

 

 欧州復興開発銀行(EBRD)の初代総裁を務めたフランスの経済学者ジャック・アタリ氏は、東京新聞のインタビューで、世界での利己主義の広がりに危機感を示し、日本の石炭火力発電推進を「犯罪行為に等しい」と批判した。また核不拡散に向け、唯一の戦争被爆国である日本が、積極的な役割を果たすよう促した。

 

 アタリ氏は、企業経営者や学者らでつくる民間の政策提言組織「日本アカデメイア」主催のシンポジウムに参加するため来日。東京新聞の取材に応じた。

 

 報道によると、同氏は、温室効果ガスを排出する石炭火力発電を推進する日本や中国、米国などの責任に言及。将来世代に負担を押し付けるような対応は、トランプ米大統領の米国第一主義をはじめ、利己主義が背景にあるとの見解を示した。

 

 アタリ氏は「日本は世界規模の課題への危機感が薄いのでは」との質問に対して、「日本が石炭火力発電を推進するのは、犯罪に等しい行為だ。石炭火力は地球に最悪の影響をもたらすからだ。この『犯罪』に手を染めているのは、日本だけでなく、中国、米国、ドイツも無罪とは言えない。背景にあるのは、個人主義の『Me First』という考え方が世界に広がっていることだ」と指摘。

 

 日本にも「Me First」が広がっていることを指摘したうえで、「少子化が進むなど、将来を顧みない現象が起きている。新天皇が即位して新たな時代が幕を開け、未来世代に伝統を引き継ぐ決意をしたのに、その世代のことを考えないのは不可思議だ。私が設立した非営利団体は、次世代に配慮する意志や能力の有無を指数化してOECD加盟国をランク付けしている。上位はスカンディナビア諸国で、フランスは中位、日本は残念ながらいつも下位だ」と述べた。

 

 核不拡散への取り組みについては、「来年は5年に一度の核拡散防止条約(NPT)運用検討会議が開かれる。NPTは来年、条約発効50年。一定の役割を果たしてきたが、現在は事実上、死に体になってしまった。決断さえすれば核保有ができる国が日本を含めていくつかあることに鑑みれば、核開発ドミノを防ぐことは難しいだろう。来年は一度立ち止まって、不拡散の枠組みを考え直す機会にすべきだ」と語った。

 

 日本がNPTにおいて果たす役割については、「世界で唯一の被爆国である日本は、不拡散を訴える正当性を有している。NPT運用検討会議の議論で、積極的なリーダーシップを発揮すべきだ」と期待を表明した。

 

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201912/CK2019121702000152.html