HOME8.温暖化・気候変動 |世界最大の鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタル、欧州で2030年にCO2排出量30%削減、2050年にはネットゼロの実現を公約。鉄鋼生産過程のクリーン化技術等を開発促進(RIEF) |

世界最大の鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタル、欧州で2030年にCO2排出量30%削減、2050年にはネットゼロの実現を公約。鉄鋼生産過程のクリーン化技術等を開発促進(RIEF)

2019-12-20 00:41:06

Arcerolemidaleキャプチャ

 

 世界最大の鉄鋼メーカーのアルセロール・ミタル・ヨーロッパ社は、欧州委員会が打ち出した「欧州グリーン・ディール(EGD)」に合わせて、2030年までに、同社の欧州事業でのCO2排出量を30%削減し、2050年にはカーボン・ニュートラル(排出量ネットゼロ)を実現する公約を掲げた。

 

 (写真は、「グリーン鉄鋼」を目指すアルセロール・ミタルの工場)

 

 同社は、EGDが重視する30年目標の達成のためのロードマップとして、鉄鋼生産からのCO2削減を促進する3つの技術に本格的に取り組むとしている。それは、①クリーン電力による鉄鋼生産②カーボン循環法(Circular carbon steelmaking)による鉄鋼生産③カーボン回収・貯留法(CSS)の活用だ。

 

 ①は鉄鋼生産に使う電力を再エネ電力に切り替えるほか、溶錬の過程で、石炭の代わりに電気分解を使って鉄を抽出する溶融酸化物電気分解(MOE)などの技術を想定しているという。

 

Arecelole2キャプチャ

 ②ではバイオマス燃料等を混焼したり、高炉ガスを鉄鋼生産エネルギーに活用することで、鉄鋼生産過程のCO2排出量を削減する③のCCSはすでに石炭火力発電等で試行されている。鉄鋼生産過程で排出されるCO2を回収し、地中や海底に貯留するか、あるいは再利用する。

 

 同社はすでにカーボン・ニュートラルプログラムを稼働させている。たとえば、ベルギーのゲント工場では、高炉からの排ガスを回収してバイオエタノールに転換するプロジェクトを2020年に完成させる予定という。

 

 ハンブルグの工場では6500万ユーロを投じて水素活用プラントを進めているほか、CO2排ガスを高炉ガスに再注入するパイロット事業も推進中。また高炉ガスをバイオエタノールに転換する排ガス回収事業にも取り組んでいるという。

 

Arcerole3キャプチャ

 

 CCSのパイロットプロジェクトについては、フランスのダンケルクで2020年から開始する。同プロジェクトでは2021年までに鉄鋼生産過程で排出されるガスから一時間当たり50万㌧のCO2を回収できる見込みだ。

 

 同社のCEO、Geert Van Poelvoorde氏は「われわれは、パリ協定とEUのEGDの両目標に適合するよう、鉄鋼業の『脱炭素化』を進めていく。これまで数年がかりで新技術開発を試行してきた。今や、これらの技術をスケールアップし、行動に移す時がきた。われわれは、完全な『脱炭素』ができることを確信している」と強調している。

 

 アルセロール・ミタルの「脱炭素路線」は、欧州委員会のEGDを支援するとともに、技術開発・実用化については、EGDで打ち出される「Just Transition Fund」の支援適用を受けるとみられる。またEU-ETS(EUカーボン排出権取引制度)での国境調整(CO2排出量の多い鉄鉱石に関税をかける等)の適用措置にも活用される可能性がある。

 

https://europe.arcelormittal.com/newsandmedia/europenews/EU_GreenDeal