HOME8.温暖化・気候変動 |3月退任の英イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏、英国で開くCOP26のジョンソン首相の金融アドバイザーに指名。サステナブルファイナンスのグローバル化の推進役に(RIEF) |

3月退任の英イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏、英国で開くCOP26のジョンソン首相の金融アドバイザーに指名。サステナブルファイナンスのグローバル化の推進役に(RIEF)

2020-01-17 08:39:53

Carney112キャプチャ

 

 3月半ばで英イングランド銀行総裁の座を退任するマーク・カーニー氏は16日、11月に英・グラスゴーで開く国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の首相の金融アドバイザーに指名された。カーニー氏は国連の気候行動とファイナンスの特別全権大使も務めており、 パリ協定の目標達成に向けたサステナブルファイナンス推進を牽引する役割が期待される。

 

 COP26は11月9~20日にスコットランドのグラスゴーで開く。会議の議長を務めるジョンソン首相のアドバイザーとしての主要な役割は、パリ協定の目標である「1.5℃目標」達成に必要な金融システム全体における野心的な行動を、COPの場で各国が共有化できるような「シナリオ」を設定する点にあるとみられる。

 

 カーニー氏は金融安定理事会(FSB)議長として、TCFDに気候関連情報開示の提案を求め、気候リスクを財務情報として開示するフレームワークづくりに道を拓いた。このTCFDの情報開示の取り組みをCOPとしても共有するとともに、さらに踏み込んで、気候変動の影響をメインストリームの金融の判断に盛り込むリスクマネジメントとリターン、ネットゼロ経済に向けた移行支援策での金融の役割強化等で、カーニー氏の主導力が求められそうだ。

 

 カーニー氏を「片腕」として起用することで、ジョンソン首相は、EU離脱後の英国の「リーダーシップ」を、EUを超えたグローバルな舞台で発揮することをアピールする狙いもあるようだ。さらに言えば、ロンドン金融市場を「脱EU後」のサステナブルファイナンスのグローバル金融センターとして「宣言」する計算も見え隠れする。

 

 カーニー氏は「首相からの指名は大変光栄。COP26の重要な会議と英国の金融サービスにおけるグローバルなリーダーシップの結合は、金融システムの転換を促して、気候変動に対応するユニークな機会を生み出すだろう」と声明を出した。

 

 そのうえで、「(金融システムの転換)のためには、移行期からネットゼロ経済化の間に生じる気候変動のリスクと機会を、金融的判断に際して常に考慮する必要がある。英国にはその準備があり、私は民間セクター、英政府、イングランド銀行、すべてのステークホルダーとともに、サステナブルファイナンスを現実化できるように働きたい」と、英金融市場の「優位さ」を言外に漂わせた。首相の期待に応える形だ。

 

 カーニー総裁の後任には、元副総裁で金融行為監督機構(FCA)長官のアンドリュー・ベイリー氏が3月16日に就任することが決まっている。

 https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/news/2020/january/mark-carney-appointed-by-prime-minister-as-finance-adviser-for-cop26.pdf?la=en&hash=9E62A7D7E5EEAF61B94DC1EA09CEBBAE6D40F2EA