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日本政府、「インフラシステム輸出戦略」改定。途上国への石炭火力発電所輸出は「高効率ならOK」。小泉環境相も賛同。一方、英国は全面禁止を明言(RIEF)

2020-07-09 21:40:44

Chierebonキャプチャ

 政府は9日、「インフラシステム輸出戦略」(改訂版)を公表した。その中で、温暖化加速につながる石炭火力発電所の途上国への輸出について、(輸出先は)エネルギー安全保障や経済性の理由で、当面石炭火力を選択せざるを得ない国から要請があった場合で、超々臨界圧石炭火力(USC)以上の環境性能の発電所の導入支援に限定するとの方針を示した。小泉進次郎環境相も「異例の措置」と評価した。しかし環境NGOは、戦略が強調する「高効率な発電所」でもパリ協定の長期目標と整合しないと批判している。

 (写真は、日本の支援で建設されたインドネシアのチレボン石炭火力発電所)

 政府の「インフラシステム輸出戦略」では、2021年以降のインフラ海外展開として、今後5年間の新たな目標を掲げた。これまで対象とするインフラについては、電力、鉄道、情報通信、農業・食品、環境など14分野をあげているが、今回、複数の関連サービスを一括で提供する事業モデルや、インフラを通じてサービスを提供するソ フトウェア・アプリケーション等も追加対象候補として明記した。

 最大の論点となっている石炭火力発電については、「世界の脱炭素化をリードするため、風力、太陽光、地熱等の再エネや水素、エネルギーマネジメント技術等も含めたCO2排出削減に資する「脱炭素移行政策誘導型インフラ輸出支援」を推進するとした。

インドネシアのインドラマユ石炭火力発電所
インドネシアのインドラマユ石炭火力発電所

 そのうえで、今後、新規の石炭火力事業については、①エネルギー政策や環境政策での二国間協議の枠組みを前提②エネルギー安全保障や経済性の観点等から当面石炭火力を選択せざるを得ない国③相手国から、脱炭素化への移行の一環として日本の高効率石炭火力へ要請があった場合④関係省庁の連携等を踏まえて、政策誘導や支援を 行う、とした。

 また、OECD公的輸出アレンジメント(OECDルール)を踏まえたうえで、対象事業は発電効率43%以上の超々臨界圧(USC)、IGCC、混焼技術、CCUS/カーボンリサイクル等で発電電力量当たりのCO2排出量がIGCC 並以下のもの、と定めた。

 今回の政府方針について、梶山経済産業相は「石炭をエネルギー源として選択せざるをえない途上国が存在する現実から目をそらさず、実効的な脱炭素化を促すことが重要。世界の脱炭素化に向けて理念を掲げるだけでなく、実態を踏まえた実効性のある政策を実施していきたい」と述べた。
コミュニティでは日本の石炭火力発電は決して歓迎されていない
コミュニティでは日本の石炭火力発電は決して歓迎されていない
 小泉環境相も「『脱炭素化に向けた方針をしっかり把握していない国に対しては支援しないことを原則とする』と変更した。支援しないという方針を書き込むのは異例。石炭に関してはいくら言っても動かないと思われていた日本が、エネルギー政策と気候変動政策を一体として進めていく、その歩みを始めたと国際的にも評価されると思う」と評価した。
 一方、英国の公的海外開発機関であるCDCグループは今月に入って、途上国での石炭火力など化石燃料関連事業へのファイナンスを停止すると発表した。例外は、対象事業がパリ協定の目標達成に適合する場合だけに限定。停止事業は石炭、石油・ガスを含むすべての化石燃料事業とした。http://rief-jp.org/ct6/104409?ctid=71
 日本政府の石炭火力限定輸出の方針に対して、気候ネットワーク(KIKO)等の環境NGO6団体は共同声明を発表、「『原則支援しない』としたことを政府方針の転換と受け止める一方、公的支援中止を決定しなかったこと、また現在進行中の案件に適用せず継続することに対し、遺憾の意を表明する」と指摘した。
 特に、新方針がUSCやIGCCを「高効率」として強調した点については、「IGCCのCO2排出量は650g/KWhと想定され、パリ協定の長期目標と整合しないことは明らか。現在計画中の案件を含めて、新たな石炭火力は今後、何十年にもわたって稼働する前提なので、大量のCO2排出を長期にロックインしてしまう。『相手国の脱炭素化の移行方針を確認する』としているが、確認したところで、石炭火力の新規建設はいかなる状況下でも、気候危機に直面する現在の世界で許容されないのは明らか」と批判している。