HOME10.電力・エネルギー |ポルトガル、国内の大規模石炭火力発電所の稼働を先週に停止。残る1か所も11月に停止へ。年内に「脱炭素」実現。EUでは4カ国目。政府の明確な目標設定が再エネ転換を促す実例(RIEF) |

ポルトガル、国内の大規模石炭火力発電所の稼働を先週に停止。残る1か所も11月に停止へ。年内に「脱炭素」実現。EUでは4カ国目。政府の明確な目標設定が再エネ転換を促す実例(RIEF)

2021-01-18 18:47:56

EDP001キャプチャ

 

  ポルトガルは、首都リスボンの南部にあるシネシュの石炭火力発電所が先週で稼働を停止したと発表した。この結果、同国の石炭火力は残り1基となるが、同火力も11月に稼働停止の予定。同国は「脱石炭」の目標を2023年としてきたが、2年前倒しで達成することになる。欧州での脱石炭国は、ベルギー、スウェーデン等に続き4カ国目。英仏イタリア等も2050年までに石炭火力を全廃することを宣言している。

 

 稼働を停止したシネシュの発電所は、電力公社のEDP(エネルジアス・ドゥ・ポルトガル)が運営する4基の石炭火力発電を備えた総発電量1250MWの大規模発電所。当初は、2023年9月までの稼働を見込んでいたが、EDPが脱炭素政策を加速して、今年停止となった。

 

 EDPは「石炭火力発電所の閉鎖は、EUのカーボンニュートラル目標に沿ったエネルギー・トランジションの自然な帰結」と説明している。同国政府およびEDPは、脱炭素後のエネルギー・電力政策について、再生可能エネルギーを中心に据えることを明確にしている。

 

 環境NGO等はシネシュの石炭火力発電所稼働停止を歓迎している。同発電所は、ポルトガル全体の温室効果ガス排出量の約12%を占めてきたという。

 

 同国に残る唯一の石炭火力発電はペゴ(Pego)地区にある石炭火力。Pego発電所は、リスボンから北東に約150kmの地点にあり、2基の発電所で合計628MWの発電能力を持つ。同発電所は仏電力会社のEngieとスペインの電力会社のEndesaがそれぞれ所有。1995年に稼働なので、操業期間16年で閉鎖になる。

 

 EUでは2016年にベルギーが国内の石炭火力を全廃した。続いて、昨年、スウェーデンとオーストリアが石炭火力発電を停止した。したがって、ポルトガルは4カ国目となる。これらの国に続いて、2022年にはフランスが、23年にスロバキア、25年にアイルランドとイタリア、さらにEUを離脱した英国も24年に脱石炭火力の目標を立てている。

 

 環境NGOの「Europe Beyond Coal」のキャンペーンディレクターのKathrin Gutmann氏は「この4年間、ポルトガルは2030年での『脱炭素』の戦略を立てていた。だが、それが今年の末には実現する。今回のシネシュ発電所の稼働停止もそうだが、国がクリーンエネルギー戦略を明確にすると、再エネへのシフトは急速に起きる典型例だ」と指摘している。

 

 EUの中では、脱石炭火力を2030年以降に設定しているドイツやチェコ、ポーランド等の国もある。 Gutmann氏は「これらの国々も、野心的な目標を掲げないと、実現性は遠のいてしまう」と述べている。この指摘は日本にもそのまま当てはまるりそうだ。今年予定されるエネルギー基本計画の改定で、政府がどこまで「本気の野心」をみせるかが問われている。

https://www.edp.com/en/news/2020/07/13/edp-anticipates-closure-coal-plants-portugal-and-spain