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米環境保護庁(EPA)のリーガン長官、科学的な環境政策の基盤となる2委員会を全面改組。トランプ時代の「反環境派専門家」を一掃、公正な指名手続きによる専門家で再編成(RIEF)

2021-04-04 15:18:48

EPA003キャプチャ

 

 米環境保護庁(EPA)長官に就任したマイケル・リーガン(Michael S. Regan)氏は、トランプ前政権時代に反環境政策的なメンバーで占められていた二つの委員会の人員刷新を打ち出した。トランプ政権時代はおよそ100の環境政策の修正とともに、政策立案のベースになる専門家会合の構成変更が進められていた。リーガン氏は「EPAの政策基盤である科学的インテグリティ(誠実性)を回復させる」と強調している。

 

 大幅改組の対象となるのは、科学アドバイザリー委員会(Science Advisory Board :SAB)と大気清浄科学アドバイザリー委員会(Clean Air Scientific Advisory Committee : CASAC)だ。本委員会だけでなく、各委員会の下に設置されている常任理事会のメンバーもすべて見直す。日本でいえば、中央環境審議会に相当する。

 

 リーガン氏は「二つの科学的アドバイザリー委員会の再編成は、米国民の健康と環境を保全するためのEPAの活動を支援する最善の科学的視点を得るためにつながる。専門家の任命には、明確で公正、透明なプロセスで選考し、従来の方式に戻る」と指摘している。

 

 トランプ政権下のEPAは、石炭火力規制や排水規制等を軒並み緩和し、環境保護庁どころか「環境破壊庁」に転じていたとの批判がある。同政権では2017年に発出した内部通達で、EPAの委員会に所属する適格研究者やNGOらへのEPAの研究助成金の助成を禁じたほか、CASACCの主要な大気汚染評価パネルを削減したり、委員会使命の手続きを無視したりしてきた。

 

 委員会の再編は、これまでのトランプ政権下で二つの委員会のメンバーに指名された委員を解約し、EPAの使命に沿った新たな委員を再指名し、新たな委員会を編成する形で進めるとしている。新たな委員指名はバイデン政権による恣意的な使命では、トランプ政権と同じになるので、すべての適格指名要件を満たす専門家を対象として、EPAに定められたプロセスに基づいて指名する。

 

 この点で日本の審議会の場合は、当該役所の政策を支援する研究者を、役所が個別に指名する方式をとっており、透明性の点で大きな違いがあるようだ。日本の審議会方式は環境省に限らず、総じて「トランプ方式」といえそうだ。

 

 EPAが改組する二つの委員会は、伝統的にEPAの政策の基盤を形作ってきた。SABは1978年に「Environmental Research, Development and Demonstration Authorization Act」に基づいて、EPAの政策に対して科学的かつ技術的知見に基づいて独立したアドバイスを提供してきた。一方のCASACは1977年の「改正Clean Air Act」によって同年に設立され、EPAの国家大気品質基準の技術的基盤となるアドバイスを提供している。

 

 リーガン氏はノースカロライナ州の環境品質長官からEPA長官に転じた。3月10日に上院で承認を得ている。EPAの長官としては初の黒人出身。

https://www.epa.gov/newsreleases/administrator-regan-directs-epa-reset-critical-science-focused-federal-advisory