HOME10.電力・エネルギー |再エネ拡大に向けた送電網の増強投資、「洋上風力45GWシナリオ」で約3兆8000億~4兆8000億円。「再エネ比率5~6割」ならば3~4割安に。電力広域的運営推進機関が推計案公表(RIEF) |

再エネ拡大に向けた送電網の増強投資、「洋上風力45GWシナリオ」で約3兆8000億~4兆8000億円。「再エネ比率5~6割」ならば3~4割安に。電力広域的運営推進機関が推計案公表(RIEF)

2021-04-28 18:11:19

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 再生可能エネルギー発電導入による送電網の増強案を検討している国の「電力広域的運営推進機関」は28日、全国ベースの送電網の投資推計額を公表した。洋上風力発電を2040年までに最大45GWに増強する場合、必要投資額は3兆8000億~4兆8000億円とした。再エネ比率を5~6割に高める場合は3~4割安くなるが、消費地でも出力制御等が発生し、系統増強の費用対効果が大きくないとした。

 

 ただ、今回の推計は現行のエネルギー基本計画に基づくもので、菅首相が提唱した温室効果ガス排出量の2030年46~50%削減とは整合していない。推奨の「洋上風力5GWシナリオ」では再エネ比率は42%にとどまる。早急にエネルギー基本計画を「46~50%」目標に沿って見直し、送電投資の見通しも改める必要がある。

 

4つのシナリオの主な推計概要
4つのシナリオの主な推計概要

 

 推計は、現行の発電需要(9808億kWh)をベースに、「電源偏在シナリオ」として洋上風力発電の導入量が30GWのケースと45GWのケース、さらにケーススタディとして洋上風力発電の一部を需要地の近くで開発する場合の「電源立地変化シナリオ」、太陽光や陸上風力発電を増強する「再エネ5~6割シナリオ」の4種類のシナリオを検証した。

 

 投資評価には、各電源の開発・導入等のコストは加味せず、送電網の増強コストと便益評価に限定した。その結果、洋上風力を45GWに増強する「推奨シナリオ」の投資推計額は3.8兆~4.8兆円で、洋上風力30GWのケースより約7割強増える。年間コストは約3600億~4500億円。年間便益は5100億円とはじいている。送電網によるCO2削減量は年間1200万㌧で、削減コストは約660億円。

 

45GWシナリオ
45GWシナリオ

 

 一方、「再エネ5~6割シナリオ」では、投資額は約2.0兆~2.6兆円と半分近くに下がる。ただ、東京等の大消費地でも再エネ出力制御の必要が増えるため、系統増強の効果が大きくないとしている。年間便益は2300億円と「45GWシナリオ」の半分以下となり、費用対効果が0.95(費用が便益を上回る)場合もあるとしている。

 
 「再エネ5~6割シナリオ」は、「45GWシナリオ」に、太陽光発電と陸上風力発電をそれぞれ4倍増とする想定。再エネ比率は他のシナリオの42%から53%へと10ポイント上昇する。同シナリオの場合、送電線増強によるCO2削減量は約1億2600万㌧追加されるとしている。

 

再エネ5~6割シナリオ
再エネ5~6割シナリオ

 

 各シナリオの前提となる発電構成は現行のエネルギー基本計画に基づいている。たとえば石炭火力は、2030年度でkWh比率26%、 原子力は同22%)となっている。

 

 送電網増強に際しては、既存の送電網を増強する案と、既存ルートのアップグレード案、新送電ルートの設置、という3つの方式が考えられる。機関では、このうち「費用対効果の観点から、増強コストを抑制可能な 考え方を優先して検討を進めてはどうか」と提案している。

 

 主な増強対策は、①既存設備を最大限活用した部分的な増強による送電容量の拡張: 電線のサイズアップ等、将来用の拡張設計を有する設備のアップグレード等 ②既存ルート全体のアップグレード、新ルート形成等による送電容量の拡張(レジリエンス強化で、必要により複線化も考慮):同じルートを活用して増容量化、新たなルートを追加して増容量化 ③HVDC(高圧直流送電)を活用した新ルート形成等、を例示している。

https://www.occto.or.jp/iinkai/masutapuran/2021/files/masuta_9_01_01.pdf