G7の気候・エネルギー政策で、議長国日本のGX政策が「グリーンウォッシュ障壁」に。国際的な化石燃料エネルギーへの公的支援終了の公約違反の言い訳にも。米環境NGOが指摘(RIEF)
2023-04-11 23:53:26

G7(7カ国首脳会議)の気候・エネルギー政策が、議長国日本が進めるグリーン・トランスフォーメーション(GX)の扱いで、二分される情勢になっているという。昨年ドイツで開いたG7気候・エネルギー・環境大臣会合では「排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援の2022年末までに終了」を公約した。だが、今年は日本のGX戦略が「『脱炭素化』の名目で公的資金を投入し、アジア全域に化石燃料使用を広める形」をとっており、英、仏、カナダ等から批判される一方で、ドイツ、イタリアが「日本寄り」になっているという。
(写真は、化石燃料向け公的資金終了を求める国際NGOのキャンペーン活動)
今年の気候・エネルギー・環境大臣会合は今週末(15~16の両日)に札幌で開かれる。同会合で対立が解消するかどうかが焦点だ。
G7の国際交渉をフォローしている米環境NGOのOil Change Internantional(OCI)によると、 昨年のG7の関係大臣会合での「国際的な化石燃料エネルギー部門への新規公的直接支援の2022年末までの終了」の合意について、英、仏、カナダはすでに合意に対応する措置をとっている。だが、日本のほか、ドイツ、イタリアも期限を過ぎても対応できていない。

OCIはG7内で対応が分かれる要因となっているのが、今年のG7議長国の日本が推進するGX政策だと指摘している。GX戦略は「脱炭素化」の名目で公的資金を投入し、アジア全域に化石燃料の使用を拡大させることを目指している。化石燃料火力発電をベースに、天然ガスから製造した水素やアンモニア等の混焼、CCS等で火力発電を延命させるGX戦略を、日本だけの「孤立政策」ではなく、アジアに広げて存在感を持たせようとする狙いと指摘されている。
OCIによると、英、仏、カナダ等の他のG7加盟国の政府は、日本が議長国の立場を利用し、LNGなどの化石燃料に依存する技術を推進しようとしている、として日本の対応に反発しているとされる。米国も期限通りの対応ができていないが、交渉の中で、英国とともに、石炭の段階的廃止の明確な期限と、電力部門における化石燃料の使用廃止に向け、より野心的な計画を盛り込むことを求めているという。
またOCIが別途まとめたレポートによると、2020年から22年にかけてのG7の化石燃料エネルギー向けの公的資金の総額は少なくとも735億㌦。これは同期間のクリーンエネルギー支援額286億㌦の約2.6倍に相当する。OCIは「この数字を比べれば、昨年のエネルギー転換を見据えた公約がいかに重要かが分かる。G7は、昨年の公約を維持・強化することで、公的資金を化石燃料からクリーンエネルギーに直接シフトできる。その結果、年間243億㌦の公的資金がクリーンエネルギーに転換が可能で、G7のクリーンエネルギー資金は年間340億㌦に増加できる」と推計している。
OCI日本のファイナンス・キャンペーン担当の有馬牧子氏は「日本の有害なエネルギー戦略は、アジアのエネルギー転換を脱線させようとしている。GXの基本方針は、化石燃料の使用を長引かせる技術の婉曲表現に過ぎず、日 本は東南アジア、南アジアでこれらの技術を推進するよう強く働きかけている。(本来、日本は)G7議長国とし て、今すぐ行動し、よりクリーンで持続可能なエネルギー源へと移行する責任がある。グリーンウォッシュとも言える見せかけの脱炭素技術を隠れ蓑にし、化石燃料の利用を継続することは許されない」と批判している。
G7 Briefing April 2023 (priceofoil.org)
https://www.env.go.jp/content/000039433.pdf