米バイデン政権、全米7カ所で「水素生産ハブ(H2Hubs)」選定。総額70億㌦(約1兆円)を投資。三菱重工が2カ所のプロジェクトに参加。「Just Transition(公平な移行)」重視(RIEF)
2023-10-14 20:59:50
(写真は、7つの支援水素ハブの一つのワシントン州等での事業)
米バイデン政権は13日、全米7カ所を水素の生産拠点(H2Hubs)として選定、総額70億㌦(約1兆円)を助成すると発表した。米国内での低コストでクリーンな水素エネルギー市場づくりを促進すると同時に、投じられる連邦の投資資金の40%は、環境負荷の大きいコミュニティへの支援や、石炭事業改廃に伴う雇用対策等の「Just Transition(公平な移行)」を踏まえて投じられる。支援が決まった7拠点のうち、テキサス州での事業と、ワシントン、オレゴン、モンタナ3州での事業には、日本の三菱重工も参画している。
バイデン大統領は13日、北東部のペンシルベニア州フィラデルフィアで発表した。7拠点でのH2Hubsでの水素生産は全体で年間300万㌧の水素を製造する計画で、2030年には米国内での水素生産量のほぼ3分の1をこれらの地域で生産できる。米国のCO2排出量の30%を占める石炭関連事業中心地域を水素エネルギー生産地に再生させることで、年間の最終消費段階でのCO2排出量を2500万㌧削減できるとしている。
ハブ1カ所に対して、連邦資金が10億㌦前後を投じる。民間資金も含めると、官民合計で総額500億㌦近く(約7兆5000億円)を水素エネルギー開発に投じることになる。開発する水素は、再生可能エネルギーで水を電気分解する「グリーン水素」のほか、天然ガスを活用し発生したCO2をCCSで回収する「ブルー水素」、原発電力で水素を製造する「ピンク水素」等、各地域のエネルギー資源に応じて開発を進めるとしている。
選定された7つのハブは次の通り。
①アパラチア州のアパラチア水素ハブ(Appalachian Hydrogen Hub:ARCH2)
②カリフォルニア州のカリフォルニア水素ハブ(Alliance for Renewable Clean Hydrogen Energy Systems : ARCHES)
③テキサス州のガルフコースト水素ハブ(HyVelocity H2Hub)
④ミネソタ、ノースダコタ、サウスダコタ3州の「ハートランド水素ハブ」
⑤ペンシルバニア、デラウェア、ニュージャージー3州の「中部大西洋岸水素ハブ(Mid-Atlantic Clean Hydrogen Hub : MACH2)」
⑥イリノイ、インディアナ、ミシガン3州の中西部水素ハブ(Midwest Alliance for Clean Hydrogen : MachH2)
⑦ワシントン、オレゴン、モンタナ3州の太平洋北西水素ハブ(PNW H2)
このうち、三菱重工は、テキサス州のガルフコースト水素ハブ(HyVelocity H2Hub)とワシントン、オレゴン、モンタナ3州の太平洋北西水素ハブ(PNW H2)の両プロジェクトに参画する。前者のHyVelocityでは、ブルー水素とグリーン水素の生産を目指しており、三菱(Mitsubishi Power Americas)を含め、AES Corporation、Air Liquide、Chevron、ExxonMobil、Ørsted、Sempra Infrastructureの7社がコア企業として参加する。
同事業が展開されるガルフコースト地域はすでに水素開発事業が集中している。HyVelocity事業は、総延長1000マイル(約1600km)の水素パイプラインを敷設し、40件の水素生産プラントを設置するほか、開発した水素エネルギーを使った48件の製造設備も併設する。同地域では水素開発の技術と設備、労働者が集積していることで知られる。PNWH2には、三菱のほか、Amazon、Air Liquide Hydrogen Energy等17社が参加する。