HOME10.電力・エネルギー |経産省。エネルギー基本計画の見直し論議、今月内に開始。パリ協定の2035年目標設定と整合する国内計画の立案が課題。石炭火力等の火力発電偏重のエネ政策の転換が焦点(各紙) |

経産省。エネルギー基本計画の見直し論議、今月内に開始。パリ協定の2035年目標設定と整合する国内計画の立案が課題。石炭火力等の火力発電偏重のエネ政策の転換が焦点(各紙)

2024-05-02 15:23:14

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 各紙の報道によると、経済産業省はエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」の見直しの作業を今月から始める。今回の計画改定では、パリ協定の中間目標として各国が設定している2030年目標(日本は2013年比46%削減)を35年目標に引き上げることに対応する国内の電源構成の目標化が焦点だ。現在の基本計画は、発電量の約3割を石炭火力発電が占め、30年でも19%を維持する内容。同比率の35年までの削減目標をどう設定するかが議論の焦点になる。

 

 共同通信等が伝えた。35年の世界全体での温室効果ガス(GHG)削減目標については、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が35年60%削減(2019年比)の必要性を提唱している。また、先の主要7カ国(G7)エネルギー相会議では、35年(30年代前半)までに排出削減策をとっていない石炭火力発電の段階的廃止で合意するとともに、現時点で石炭火力依存が続く日独に配慮した「各国のネットゼロ政策に沿う『1.5℃』目標との整合」という条件で合意した。https://rief-jp.org/ct5/145062?ctid=72

 

 今回のエネ基本計画の設定は、こうした気候対策の喫緊性と、国際環境を踏まえた、現実的でかつ野心的な計画設定が求められる。まず、国全体での削減目標を現行の30年46%削減からIPCC提唱の35年60%に引き上げるためには、シンクタンクなどの推計では日本全体で約3億㌧のGHG削減が必要になる。その削減寄与度としては電力部門での電源構成変化分が4割弱を占めるとしている。

 

共同通信作成
共同通信作成

 

 つまり30年以降の5年間で電源構成の脱炭素化を4割近く進める必要があることになる。現行計画では30年の電源構成に占める石炭火力比率は2019年の32%を4割減の19%に、天然ガス火力は37%を20%に引き下げるとしており、火力発電全体の30年の割合は41%と設定している。一方、再エネの30年目標は全体で36~38%。依然、化石燃料発電が優位な電源構成だ。

 

 これらの30年削減目標から、さらに削減率を14㌽引き上げる35年目標を設定するうえでは、再エネの拡大、原発稼働の拡大等も選択肢だが、両電源とも、発電量を急拡大する施策は現状の経産省の取り組みでは高められそうもない。特に再エネは、2032年以降、固定価格買取制度(FIT)の買取期間が終了する「卒FIT」電源が大量に現れ、固定価格買取のインセンティブを失う「卒FIT」電源の継続が課題となる。基本計画ではこの点についても新たな方針を示す必要がある。

 

 GHGの主要排出源である石炭火力向けの削減対策としては、アンモニア混焼発電とCCSの活用がある。前者について、経産省は、30年までに20%混焼発電を実証化し、30年代前半に50%混焼に引き上げる方針をグリーン・トランスフォーメーション(GX)政策として掲げている。しかし、両技術とも、技術的可能性と経済性の両面で、実現可能性は確定しておらず、今後の実証実験次第というのが実態だ。

 

 仮に混焼方式が技術的にうまくいくとしても、アンモニア製造時に排出されるCO2の処理問題がある。同省はこれらのCO2はCCSで回収・貯留するとしているが、国内にCCSの適地は限られており、容易に貯留サイトを確保できるかは不明だ。CCSの経済性についても現状は不透明感が漂っている。しかし、経産省はこれらの火力発電維持によって生じるコストアップ分は電力料金に上乗せすればいいと考えているようだ。

 

 今回のエネ基本計画の見直しでは、経産省が長年、国全体のエネ計画の柱に据えてきた火力発電偏重の政策からの「野心的な」切り替えが求められる。火力発電を縮小することでIPCCの目標と整合する排出削減を実現し、代替する発電量を再エネ増大、電力網の効率化、省エネの推進等によって確保することで、より安定し、よりコストの安いエネルギーに切り替える展望を開くことが求められている。それこそが、真の「トランジション(移行)」政策になるはずだ。

                           (藤井良広)

https://www.47news.jp/10866279.html

https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_02.pdf

https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20231122.html