HOME |全国の住宅の屋根置き太陽光発電と電気自動車(EV)の蓄電機能の組み合わせで、日本の電力自給率85%達成へ。CO2排出量も87%削減。東北大研究チーム試算。GXより低コストで安定的(RIEF) |

全国の住宅の屋根置き太陽光発電と電気自動車(EV)の蓄電機能の組み合わせで、日本の電力自給率85%達成へ。CO2排出量も87%削減。東北大研究チーム試算。GXより低コストで安定的(RIEF)

2025-05-23 22:36:30

スクリーンショット 2025-05-23 223408

 

   日本全国の市町村にある住宅等の建物の屋根上に太陽光パネルを設置し、さらに電気自動車(EV)の車載電池を蓄電池として組み合わせることで、現在の日本全体での年間総発電量を大きく上回る発電量を確保し、電力自給率が平均85%に上昇。CO2排出量も87%削減できるとの試算を東北大学の研究チームが公表した。特に地方ではほぼ100%に近い電力自給も見込めるという。政府のGX政策では現行の資源輸入依存型の電力システムの温存を最優先として、電力自給(electricity self-sufficiency  :  ESS)の発想はほとんど含まれていないが、GXよりはるかに低コストでかつ安定的な電力自給が可能なようだ。

 

 「電力自給」の試算をしたのは、東北大学大学院環境科学研究科の小端拓郎准教授らの研究グループ。日本全国1741市町村を対象に、住宅などの屋根上太陽光パネルとEVを組み合わせて家庭の電力をまかなうシミュレーションを行い、大幅な脱炭素効果を明らかにした。研究内容は、2025年5月15日にエネルギーの国際学術誌Applied Energyに「On the decarbonization potentials of rooftop PVs integrated with EVs as battery for all the municipalities of Japan」と題して掲載された。

日本全体の日照状況
日本全体の日照状況

 

 それによると、住宅などの屋根の有効面積の約70%に太陽光パネルを設置して発電し、それらの電力を、家庭のEVの車載電池を蓄電池として安定的に電力を使う。これにより、各地域の電力需要は平均85%まで自給可能になり、CO2排出量も現状より87%削減できるという。特に発電効率のいい地方ではほぼ100%に近い自給も可能で、都市部に比べ格段に高い自給率が達成できるとしている。

 

 太陽光発電とEVの利用によって、電力の自給が見込めることは知られていたが、小端准教授らのグループは、実際に日本全体の住宅を対象とし、EVの普及も見込んだ実証的な試算結果として、将来的に「暮らしの電気を自給自足できる社会」が実現可能であることを示した。

 

 試算では全住宅の約70%に屋根置き太陽光発電設備を設置すると、日本全国で年間1,017TWh(Tはテラ:1兆)の発電量となる。研究グループのシュミレーションでは、現在の日本の火力発電や原発、再エネ等をミックスした発電設備による年間総発電量の8TWh(2022年度)を大幅に上回る可能性があることが示されたとしている。

 

太陽光発電とEVの蓄電機能を組み合わせた電力自給率等の試算結果
太陽光発電とEVの蓄電機能を組み合わせた電力自給率等の試算結果

 

 電力自給率が大幅にアップするのは、発電設備の太陽光発電だけではなく、EVを蓄電池として組み合わせることが効果をあげる。太陽光発電だけだと平均45%程度となるが、EVの蓄電機能によって昼間に発電した太陽光電力を夜間あるいは次の日以降にも活用することで、自給率は平均85%にまで向上し、CO2排出も87%削減できるとしている。電力の自給によるコスト削減効果も33%と試算され、経済的メリットも期待できる。

 

 地方の農村部では電力需要の最大98%を太陽光+EVでまかなえる。一方、都市部や日照の少ない北日本では自給率が低くなることから、研究グループでは、各地域の条件に応じた再生可能エネルギーの導入を支援し、EVの車載電池を有効活用する政策の重要性が示された、としている。日本政府のGX政策では、太陽光などの再エネ発電、あるいは蓄電地機能、EV促進等がそれぞれ別々の施策として盛り込まれているが、それらを最適設計する思想を欠いているといえる。

 

 研究グループでは、太陽光発電とEV の組合せで「最大限の脱炭素ポテンシャル」を実現するうえでの課題とされる住宅所有者の協力や初期投資等については、技術進歩により太陽光パネルや EV の経済性は年々向上しており、今後日本でも家庭用の V2H(Vehicle to Home)システムを促進するインフラ整備や制度設計によって、研究が示した「電力の地産地消型コミュニティ」が各地で実現していく可能性がある、と期待を示している。

 

 同グループとしては、「地域ごとに異なる条件に合わせた再エネ導入支援策が重要であり、都市部でも EV の積極活用や屋根上空間の有効利用を促す政策が必要」と指摘し、電力系統との連携(V2G)なども含めたエネルギーシステムの構築に向け、自治体や企業と連携しながら研究を深化させていく、としている。

                           (藤井良広)

https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/05/press20250521-02-solar.html

https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20250521_02_solar.pdf

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0306261925007974?via%3Dihub