HOME13 原発 |東電幹部、福島原発事故時の炉心溶融基準の「見落とし」問題で、「私自身は認識していた」と、存在を認める発言。意図的に事態を過小評価した可能性浮上(各紙) |

東電幹部、福島原発事故時の炉心溶融基準の「見落とし」問題で、「私自身は認識していた」と、存在を認める発言。意図的に事態を過小評価した可能性浮上(各紙)

2016-04-12 14:38:25

fukushima6キャプチャ

 

 各紙の報道によると、東京電力が福島第一原子力発電所の事故時、「炉心溶融(メルトダウン)」を判断する社内マニュアルの基準を見落としていたとされる問題で、東電の岡村祐一原子力・立地本部長代理が11日の記者会見で、「(炉心溶融の基準を)私自身は認識していた」と語った。東電幹部が基準を認識していたことを公式に認めたのは初めて。

 

 東電が事故前の2010年4月に策定した原子力災害対策の方針を示した社内マニュアルでは「炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶融と判定する」と明記していた。事故発生から3日後の2011年3月14日朝には、1号機で炉心損傷の割合が55%、3号機では30%に達したことから、マニュアルの判定基準に基づけば、同日には炉心溶融が起きたと判断できた。

 

 しかし東電は、事故2カ月後の2011年5月まで「溶融を判断する根拠がない」として、燃料の状態を「炉心損傷」と説明し続けた。ところが今年2月、「社内の原子力災害対策マニュアルに溶融の判断基準があった。5年間見過ごしていた」と公表した。

 

 重大事故であることが明らかだったにもかかわらず、「炉心損傷」という表現を使い、事態の深刻さを感じさせる「溶融」という言葉を避け続けた。東電が「炉心溶融」を正式に認めたのは2カ月後で、東電の情報開示姿勢に対する不信を招いた。また東電自身が作成したアニュアルの存在を5年間も、東電の人間が気付かなかった、という説明に、改めて不信感が示された。

 

 この日の会見で、岡村氏はこの点について、5%を超えると炉心溶融だということは「長年の仕事の中で知っていた」と話した。そのうえで、当時は事故対策要員として4号機の使用済み核燃料プールへの注水策などを検討しており、「自分は炉心溶融を判断する立場にはなかった」と説明した。

 

  マニュアルが示す「5%超が炉心溶融」との基準を理解していた東電幹部がいたことは、他にもマニュアルを理解していた幹部や社員がいた可能性を示す。本来、社内マニュアルは社員に周知徹底するものだけに、存在を知らないこと自体があり得ないので、岡村氏の発言は当時の事故対策に当たった東電経営陣が「意図的にマニュアルを無視した」可能性を示唆する。

 

 東電がマニュアル通りに「炉心溶融」を公表していれば、住民の避難のあり方も異なっていたと思われる。現在、福島県の子どもの健康問題で議論が続いているが、そうした生活不安が長期化しているのも、事故の過小評価で周辺住民の対応が遅れたことも一因となっている。東電の情報判断の遅れが、意図的だったとすれば、事故責任に加えて、事故後の被害最小化責任も果たさなかったことになる。

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201604/20160412_63036.html