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障がい者雇用率の“偽装”問題、環境省も実施。合計10府省庁が「ごまかし」に手を染める。市レベルでも発覚。どこまで広がる「障がい者雇用偽装」(各紙)

2018-08-23 15:51:11

shougai1キャプチャ

 

 各紙の報道によると、中央省庁が雇用する障害者数を水増ししていた問題で、環境省も同様に障害者手帳や診断書を確認せずに雇用率に算入する「ごまかし」を長年にわたって実施していたことがわかった。また同省のほか、内閣府、防衛省でも「偽装」が見つかっており、水増しが発覚した行政機関は、疑いも含めると計10府省庁に拡大した。

 

  障害者手帳の対象外である糖尿病の職員を、障害者として数えているケースも発覚したという。自治体でも、県段階だけでなく、愛媛県松山市、福井県鯖江市などでも、同様の措置がとられていたこともわかった。今後、さらに全国の市町村にも拡大する可能性がある。

 

 環境省は、最近は環境保全だけでなく、社会、ガバナンスも含めたESG分野についての情報開示や金融化を唱導している。民間企業のESG対応を求める一方で、自らは社会分野での課題でもある障がい者雇用率をごまかしていたことになる。政策面では新しい分野を強調しながら、自らの組織運営では国民の目をごまかす数字合わせを長年にわたって積み上げてきたわけで、同省を含め、中央官庁の歪んだガバナンス構造を露呈した形でもある。

 

国会内で開かれた野党合同ヒアリング
国会内で開かれた野党合同ヒアリング

 

 今回の雇用率の偽装について、環境省を含め各省庁は「制度に対する理解不足で図的なものではなかった」などと説明している。だが、国が制定した制度を国の機関や自治体が「理解していなかった」というのは言い訳にもならない。また国だけでなく県市でも同様の対応が横行していたことは、「偽装」が“公的な基準”として、官僚機構の中でまかり通っていたことを物語る。http://rief-jp.org/ct5/81859

 

 厚生労働省では同日、障害者雇用分科会が開かれ、労働組合や障害者団体から厳しい批判が相次いだという。連合の村上陽子総合労働局長は「働こうとしている障害者や家族の思い、努力をないがしろにしている」と非難した。

 

 また日本盲人会連合の竹下義樹会長は「どういう意図で不適切な報告をしたのか。『(厚労省作成の)ガイドラインに対する理解があいまいだった』という答えはごまかしだ」と行政への不信感をあらわにした。

 

審議会分科会長の阿部正弘氏(右)
審議会分科会長の阿部正浩氏(右)

 

 分科会会長の阿部正浩中央大教授は「あってはならないことで非常に残念。こうしたことが起こった背景と原因を究明し、今後こういうことが起こらないよう国全体で対策をまとめていただきたい。障害者雇用が後退してはならず、前進するように審議会でも議論していきたい」と話した。だが、この問題では審議会の役割も重要だ。

 

 2014年に厚生労働省の所管法人で、虚偽報告が発覚したことがこの問題の端緒だった。同省はその後、独立行政法人の検査を進めてきたが、国や自治体は調査の対象から除外している。審議会はこうした対応を手を拱いて傍観してきた、と指弾されても仕方がない。役所が定めたシナリオへの箔付けのためだけの審議会の存在意義は、もはやない。

 

 現在、同分科会では、障害者雇用を促進するため、雇用率を達成しなかった企業が国側に支払う納付金の対象を、小規模企業にも拡大することを目指して、議論を進めている。現行法では従業員100人以上の企業が雇用率を達成できない場合、その人数に応じて納付金を課せられる。算定が正しく行われているかをチェックするための定期的な訪問検査もある。

 

 しかし、こうした仕組みは、国や自治体、さらに公的機関に対してはない。国のチェック体制が不十分でありながら、民間への雇用率厳守の罰則(納付金)範囲を拡大するという審議を引き受けた審議会の姿勢も問われる。

http://rief-jp.org/ct12/81954

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180822/k10011586111000.html?utm_int=detail_contents_news-related_002

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018082302000149.html