HOME8.温暖化・気候変動 |世界主要銀行の「化石燃料ファイナンス成績表2020」を環境NGOが共同報告書。一位は米銀JPモルガンチェース。日本勢はMUFGが全体の6位でトップ。パリ協定後も融資増続く(RIEF) |

世界主要銀行の「化石燃料ファイナンス成績表2020」を環境NGOが共同報告書。一位は米銀JPモルガンチェース。日本勢はMUFGが全体の6位でトップ。パリ協定後も融資増続く(RIEF)

2020-03-19 22:39:44

Ran11キャプチャ

 

   国際的な環境NGOが共同で、報告書「化石燃料ファイナンス成績表2020(Banking on Climate Change 2020)」を公表した。日本のメガバンク3行を含む世界の主要銀行35行は、2015年のパリ協定採択後の4年間で合計約2.7兆㌦以上を化石燃料部門に投融資し、その額は引き続き、増加傾向にあるという。NGOは「化石燃料産業への資金提供はパリ協定以降毎年増えており、気候危機の最悪の結果回避を求めるIPCC(国連気候変動政府間パネル)の勧告に真っ向から反している」と批判している。

 

 米環境NGOの レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)やオランダのBankTrack、先住民族環境ネットワーク(IEN)、オイル・チェンジ・インターナショナル、リクレイム・ファイナンス、シエラクラブが執筆し、世界45カ国250以上の団体が賛同している。

 

 調査対象の投融資は、石炭、石油、ガス部門に関わる世界2100社に対する2016年〜2019年の間の融資・引受としている。化石燃料全体への投融資額の多い金融機関ランキングでは、トップが米銀のJPモルガンチェースで4年間合計で2686億㌦(約28兆2000億円)、2位から4位もウェルスファーゴ、CITI、バンクオブアメリカと米銀がそろう。

 

化石燃料関連融資の多い上位1ランキング
化石燃料関連融資の多い上位ランキング

 

 5位の英銀RBS(ロイヤルバンクオブスコットランド)の後の6位に、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が1188億㌦(約12兆4700億円)で日本勢トップ。みずほフィナンシャルグループが1030億㌦(約10兆8100億円)で9位、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は595億㌦(約6兆2400億円)で20位。3メガバンクの中でも、MUFGはSMBCの約2倍の融資量で、足並みは微妙に異なるようだ。

 

 トップのJPモルガンチェースは2位のウェルスファーゴよりも約36%も多く、断トツの「ブラウンファイナンス銀行」といえる。報告書は上位12行を「Dirty Dozen」と呼んでいる。このうち米銀が5行、カナダが3行、日本と英国が2行ずつで、アングロサクソン系と日本勢で占められている。欧州の独仏等では13位にBNPパリバ(仏)が続いている。中国勢では15位に中国銀行が入っている。

 

 主要35行の4年間合計の投融資額2.7兆㌦のペースがこのまま続くと、年間の総投融資額は2019年の7356億㌦から、2030年までに1兆㌦に膨らむ計算だ。

 

アジアでの「石炭投融資金融機関」は日本と中国勢で占められる
アジアでの「石炭投融資金融機関」は日本と中国勢で占められる

 

 報告書は化石燃料投融資を減少させたり、投融資制限方針を打ち出し、実践している金融機関をスコアリング評価(200点満点:42行ベース)をしている。もっともスコアが高かったのは、仏銀クレディ・アグリコル(82点)で同行を含めた上位10行はすべて欧州銀行で占められた。うち仏銀が5行と断然多い。次いで英銀2行。日本勢はMUFGが5点で30位、みずほとSMBCがそれぞれ3点で同率31位と、いずれも一ケタしか点がとれない水準で低迷している。最下位は中国の農業銀行と中国工商銀行(ICBC)。いずれもゼロ点だった。

 

 

 RAN「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケン氏は「歴史的なパリ協定が締結されて以来、メガバンクのMUFG、みずほ、SMBCグループは、合計で約2814億ドルの巨額の資金を化石燃料に無駄に費やしてきた。MUFGとみずほだけで約90億㌦の資金を世界の主な石炭火力発電企業30社に提供してきた。緊急かつ大胆な行動が取られなければ、メガバンクはさらなる抗議や株主提案、国際的な批判を受けるだろう」と指摘している。

https://www.ran.org/wp-content/uploads/2020/03/Banking_on_Climate_Change__2020_vF.pdf