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「コロナ後」の経済回復を支援する欧州議会主導の「グリーンリカバリー・アライアンス」に50以上の金融機関CEOが追加参加。既存建物の省エネ化、低炭素交通化等をターゲットに(RIEF)

2020-05-06 22:48:38

GRA1キャプチャ

 

 新型コロナウイルス感染後の欧州経済の回復策を、気候変動対策や環境・社会面を重視したものにしようと、欧州議会が提唱する「グリーンリカバリー・アライアンス(GRA)」に欧州の金融機関のCEOら50人以上が賛同した。グリーンリカバリーの対象としては、①既存住宅・建物の省エネ促進②電気自動車等、運輸部門の低炭素化の展開③再生可能エネルギーと低炭素化電力・熱の拡大と蓄積、等への集中化を掲げている。

 

 (写真は、グリーンリカバリーの中心政策になりそうな再エネ事業)

 

 GRAは、欧州議会の環境・健康委員会議長を務めるフランス選出のパスカル・カフィン(Pascal Canfin)氏が4月半ばに提唱。立ち上げには、ユニリーバーやイケア、H&Mなどの37の欧州企業のCEO、28の産業団体、12の加盟国環境相、90の労働組合等が賛同した。EUでは欧州委員会が欧州グリーン・ディール(EGD)を政策の柱とした「グリーンリカバリー」を目指しており、欧州議会のGRAは同政策と歩調を合わせるものだ。http://rief-jp.org/ct8/101431?ctid=71

 

 今回、新たに50以上の金融機関のCEOがGRA支持を表明した。名乗りを上げたのは、フランスのBNP Paribas、 AXA、ドイツのAllianz、スペインのSantander、BBVA、フィンランドのNordea Life & Pension、デンマークのPensionDanmakrなど。

 

GRA2キャプチャ

 

 EUが目指す欧州グリーンディール(EGD)は、エネルギー部門等において、脱炭素や低環境負荷を目指して2050年に向けた長期的な構造改革を推進する点にある。これに対して、「コロナ後」に求められるグリーンリカバリーは、方向性は同じ脱炭素・低環境負荷にあるが、同時に、傷ついた経済を癒し、短期的な回復を底上げするカンフル対策等も必要となる。

 

 ただ、迅速な景気刺激策を急ぐと、従来型の高炭素排出事業や環境負荷の高いビジネスの温存等につながるリスクもある。今回参加した金融界のCEOたちは、そうしたリスクを回避し、迅速なグリーンな復興を金融面から支える決意だ。

 

 金融界のCEOらが強調するのは、2008年のリーマンショック時と金融界の置かれた位置が違うという点だ。リーマンはまさに金融危機だった。欧州の金融界も資産部門に大きなダメージを被り、経済を支える投融資能力を著しく低下させてしまった。

 

 しかし、今回のコロナ危機は、金融界に負担が集中しているわけではない。むしろ各国の財政に負荷がかかっており、金融市場がどう対応するかが問われている。そこで、金融界のCEOたちは、迅速に景気刺激につながり、かつグリーン経済への道筋につながる分野への集中的な金融支援を担うべくGRAに参加したというわけだ。

 

 GRAに署名した金融CEOらは、気候変動対策と生物多様性保全を、欧州経済政策の中軸に据えた「ポスト・パンデミック」の移行刺激政策に据えることに注力するとしている。その一人、BNP ParibaのCEO、Jean-Laurent Bonnafé氏は、環境配慮を経営に取り込むことを目指すビジネス団体「Entreprises pour l’Environnement (EpE)」の代表も務める。

 

 同氏は「パンデミック後の世界で、短期的な視点を超えて危機に対応するには、多くの知恵を分け合う必要がある。われわれのこれまでの生産方法や、ビジネスモデル、消費行動、生活スタイル、人間関係、自然との接し方等を変革し続けていく必要がある。そうした対応につながる景気回復への取り組みを、われわれは、サステナブルでレジリエントな基盤のうえで始めている」と述べている。

 

 GRAを推進しているカフィン議員は、「気候ニュートラルへの移行は重要な投資を必要とする。したがって、金融界との協力は非常に重要だ。銀行や資産運用機関等の金融界が『2℃目標』に自らのポートフォリオを適合させないと、われわれは温暖化の進行を止めることはできない」と指摘している。それこそが、サステナブルファイナンスだ。

 

http://www.epe-asso.org/en/opinion/