HOME4.市場・運用 |国連支援の責任投資原則(PRI)、5機関を活動不活発を理由に初めて「除名」。除名規定導入後初の実行。2018年度の自主退会はThomson Reutersなど53機関に(RIEF) |

国連支援の責任投資原則(PRI)、5機関を活動不活発を理由に初めて「除名」。除名規定導入後初の実行。2018年度の自主退会はThomson Reutersなど53機関に(RIEF)

2020-09-29 16:10:53

PRI004キャプチャ

 

 国連支援の責任投資原則(PRI)は、署名機関のうち、PRIが定める最低履行要件を満たせていないとして5機関を除名処分にした。フランスの国営郵便公社の孫会社に相当するBPEなどが含まれている。これとは別に、2018年度中に自ら脱退した機関が53件、レポーティングのミスなどで除名された機関が10件に上った。自主退会の中には、大手情報会社のThomson Reutersも含まれている。

 

 PRIは資産保有機関、資産運用機関、サービスプロバイダーの3分野の署名機関で構成する。現在の署名機関総数は3000を超えている。署名機関の中には、本来、求められるESG投資等の責任行動を伴わず、「PRI署名機関」の評判だけを利用するところもあるとされる。

 

 そこでPRIは2018年に「説明責任ルール(Accountability Rules)」を定め、その中で、資産保有と資産運用の両署名機関が守るべき最低履行要件(minimum requirements)を規定、要件を満たさない機関は除名する手続きを導入した。今回、その第一回の判定となった。http://rief-jp.org/ct4/79684

 

除名機関選定のプロセス
除名機関選定のプロセス

 

 最低履行要件は、①投資政策に責任投資(RI)アプローチを盛り込む②責任投資政策を実行する機関内外のスタッフ数の開示③責任投資の実行に関するシニアクラスのコミットメントと説明責任メカニズムの導入④運用資産総額の50%以上にESG投資ポリシーの適用を求めるーー等となっている。http://rief-jp.org/ct6/75883

 

  今回の除外発動は、2018年の基準設定から2年の間に、各機関を評価、分析、改善のエンゲージメント等を重ねた結果、対応できないところとして5社の除名を決定した。5社のうち4社は資産運用機関で、1社は資産保有機関。

除名が決まった5機関
除名が決まった5機関

 最も規模が大きいのは、仏郵便公社系のポストバンクの子会社のプライベートバンキングのBPE。保有資産額は約50億ユーロ(約6250億円)。その他は、オランダ最大の労働組合系の運用会社Stichting Gemeenschappelijk Beleggingsfonds FNV (GFB)、インドネシアのCorfina Capital、米国のPrimary Wave IP Investment Management、フランスのDelta Alternative Management。いずれも運用資産額は4お億㌦~3億1000万㌦規模の小規模機関。

 このうちGFBの担当者は、ロイターの報道に対して、「(除名は)非常に残念だ。われわれはFNVの全体の資本のごく一部を担当しているだけ。PRIの基準を満たすコストはわれわれが(PRIから)得るベネフィットを超えていた。FNVの主な資本は別途運用されており、それらは引き続き署名機関で管理されるだろう」とのコメントを出している。他の機関は「ノーコメント」あるいは、取材への応対がなかったとしている。

 今回の基準不適合の除外とは別に、毎年、署名機関の新規加入と退会の状況も公開された。2018年度の新規加入は500件以上となった。これに対して、自主的退会が53件、合併や買収による署名機関の統一などでの減少が22件、活動停止による退会3件、PRIが定める情報開示やアセスメント手続きに協力しなかったとの理由の退会が10件あった。

 自主的退会機関の中には、Thomson Reuters のほか、シンクタンクのGlobal Footprint Network、マイクロファイナンス機関のGrameen Crédit Agricole Microfinance Foundationなどが含まれている。

  ただ、市場関係者や署名機関の間には、当初2018年の除名審査を開始した段階で、「監視リスト」には165機関が対象になったと公表されていた。結果として、小規模な5機関だけだったことから、「大山鳴動」との声もあがる。PRIのCEO、Fiona Reynolds氏は「われわれは十分に活動していない署名機関を抱えていた。彼らは(PRI)のブランドに寄りかかり、他の署名機関の活動に依存していた」と手続きの成果を強調している。

 PRIによると、今回の除名審査の過程で、23機関は自主的退会の道を選んだほか、4機関はPRIの指摘に反発して協議した結果、アピール通りに除名リストから除外されたという。PRIでは最低履行要件の妥当性を改めて検討するとしている。

https://jp.reuters.com/article/global-investments-pri-idAFL5N2GK24T

https://www.unpri.org/annual-report-2019/how-we-work/more/new-and-former-signatories

https://www.unpri.org/reporting-and-assessment-resources/signatories-delisted-for-not-meeting-the-minimum-requirements/6480.article