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2020年の自然災害等によるグローバルな保険金支払い額、前年比40%増の830億㌦(約8兆5500億円)。過去5番目。米国等で暴風雨、森林火災等増。スイス再保険速報(RIEF)

2021-01-12 08:00:20

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  2020年の世界の自然災害と人的災害による保険金支払い額は、前年比40%増の830億㌦(約8兆5500億円)に達した。日本の台風等による風水害被害は少なかったが、米国での暴風雨及び森林火災等による保険金損失が増え、過去5番目の支払額となった模様だ。

 

 スイス再保険が速報値としてまとめた。同社では3月に確報値を公表する予定。推計には、新型コロナウイルス感染による企業等への保険金支払額は含まれていない。

 

 全体の支払額のうち気候変動で増大している自然災害による支払い額が全体の9割強となる730億㌦だった。米国での雷雨、竜巻、洪水、暴風等と森林火災が多くを占めた。いずれも気候変動激化の影響とみなされている。

 

 米国のハリケーンは複数発生したが、過去に3つの巨大ハリケーン(Harvey、 Irma、Maria)が襲来した2017年の970億㌦や、2005年のカトリーナによる870億㌦に比べ、総被害額は200億㌦と比較的、少なく抑えられた。ハリケーンの進路に住宅密集地等が相対的に少なかったことが軽い被害額の要因とみられている。

 

 自然災害増大によるグローバな経済的損失のうち2020年は45%が保険でカバーされた。過去10年平均ンカバー率37%を上回った。自然災害増大の影響から保険加入が増えていることを示す。気候変動の進展によって、湿度と気温が上昇することが、より異常な気象状況が作り出されるとみられている。

 

 地域別では、米国が年間を通じて、暴風や竜巻、雹(ひょう)、洪水等が発生し、これらの被害による保険金支払額は過去最高になった模様だ。オーストラリアとカナダも雹によって大きな損害が発生した。オーストラリアでは1月に南東部で発生した深刻な雹嵐によって、保険金支払額が10億㌦強発生した。カナダでは6月にカルガリー地区で雹被害が過去最高の10億㌦に達した。

 

 森林火災による保険金支払額も増大した。米国の森林被害は8月中旬を中心に急増、高い保険支払額となった。オーストラリアは2019年から続く森林火災が20年の初めまで継続するという記録的な事態となった。米国の森林火災はカリフォルニア、オレゴン、ワシントン各州で、800件以上発生し、消失面積は600万エーカー近くにまで広がった。損失額は過去最大だった2017、18年よりは低かったが、森林火災被害としては最大級の年の一つだった。

 

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 欧州では2月に北欧地域で冬嵐の影響で、洪水、停電、交通マヒ等が発生、全体で20億㌦以上の保険金支払いが起きた。5月にはインドで、ベンガル湾で発生したサイクロン・アンファンの影響で、インドで過去最大の被害額となる130億㌦の損失となった。ただ、インド等では保険契約率が低いことから、経済的損失のうち、今回の保険支払い分は限られている。

 

 中国では5月に長江流域での激しい豪雨、洪水の影響を中心として、周辺の産業等が影響を被り、20億㌦規模の保険支払いが発生した。

 

日本は台風の襲来件数は平年より少ない23件で、災害被害額も限られた。しかし、7月には、熊本県を中心に九州や中部地方などで集中豪雨が発生し、被害が広がった。

 

 スイス再保険のチーフ・エコノミストのJerome Jean Haegeli氏は「新型コロナウイルス感染とともに、気候変動はグローバル・レジリエンスの重要課題。パンデミックも気候変動も、突然現れる『ブラックスワン』ではない。しかしグローバルなグリーン回復がうまくいかないと、将来の社会のコストを増やす。2020年の自然災害は、保険カバー率の高い地域に影響を与えたことになり、被害を受けた人々や地域を保険で支援し、被災者の金融的レジリエンスを高めたといえる」と指摘している。