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国際投資家団体「IIGC」、「2050年ネットゼロ」に向け投資機関の投資ポートフォリオをネットゼロ化する新フレームワーク立ち上げ。10年以内に低炭素化と気候解決への投資目標設定(RIEF)

2021-03-10 23:54:58

IIGCC001キャプチャ

 

  気候変動対応を促進する国際投資家団体の「The Institutional Investors Group on Climate Change (IIGCC)」は、「2050年ネットゼロ」に向けて、年金、資産運用機関等の投資家の投資ポートフォリオを低炭素経済に移行させるための「ネットゼロ投資フレームワーク(Net Zero Investment Framework)」を立ち上げた。フレームワーク参加機関は、今後10年以内、できるならば5年以内に、投資ポートフォリオの低炭素化と気候解決への投資配分を促進する目標の設定等を求められる。すでに37の年金機関や資産運用機関が参加を表明、参加機関の総資産額は8兆5000億㌦を超す。

 

 IIGCCの新たなイニシアティブは、2019年に立ち上げた パリ協定の「1.5℃目標」の達成と整合する投資イニシアティブ「Paris Aligned Investment Initiative(PAII)」を土台として、資産保有機関および資産運用機関が運用資産全体を対象とした総合的な「2050年ネットゼロ投資戦略」を構築することを促進することを目指している。各機関は3つのターゲットを求められる。

 

 第一は、投資ポートフォリオの低炭素化と、気候解決につながる投資資金の配分の促進のためのターゲットを発展させること。第二は、ネットゼロに適合するポートフォリオの対象企業と対象資産の概要を示す。第三は、高炭素集約セクター向け投融資の少なくとも70%をネットゼロに適合させるか、エンゲージメントを条件づけた目標の設定である。

 

 IIGCCの代表理事のStephanie Pfeifer氏は「フレームワークの主な目標は、2050年までのグローバルネットゼロの達成に整合する方法で、投資家に自らの投資ポートフォリオを低炭素化させるとともに、気候解決につながる投資を増やせるようにするため」と指摘している。

 

 フレームワークは各機関が構築する投資ポートフォリオについて、概ね10年以内に目標を達成できることを目指すとし、可能ならば5年以内とし、「ネットゼロ投資ポートフォリオ」の早期達成を求めている。

 

 目標の達成のためには、投資家自身が「ネットゼロ・スチュワードシップ」と企業へのエンゲージメント活動の拡大を通じて、実体経済を低炭素化に移行させるため、投下資本をシフトさせることに役立たせる、としている。低炭素活動促進の投資行動をとることに加え、投資先のガバナンスプロセスや、経営戦略へのアドボカシー、エンゲージメント活動等による企業への影響行使も活用することを目指す。

 

 イニシアティブの立ち上げに参加した21の資産運用機関(総資産額1兆2000億㌦)はすでに今回のフレームワークに基づいて「2050年ネットゼロ」の目標達成を宣言している。それらの機関として、オランダのアセットマネジャーのNN Group、スウェーデンの公的年金AP2、英国の労働者年金基金のNEST、米環境慈善団体のSierra Club Foundation等が含まれている。

 

 参加する37の機関全体の資産規模は8兆5000億㌦を超えている。IIGCCh昨年12月に別途、「Net Zero Asset Managers Initiative」を立ち上げている。同イニシアティブに参加した年金等の機関の多くも、新イニシアティブに参画しているという。12月のイニシアティブは資産運用機関をターゲットとしており、今回の新イニシアティブは運用機関と保有機関を両方含めているが、両イニシアティブは相互に補完的としている。

 

 両イニシアティブの立ち上げに関与した英Church of Englandの年金理事会の倫理・エンゲージメント担当ディレクターのAdam Matthews氏は「昨年12月のイニシアティブはコミットメントによるもので、今回のイニシアティブは前者に基づいて設定したターゲットに対応した投資フレームワークを提供する役割を果たす」と位置付けている。

 

 新イニシアティブのフレームワーク設定に際しては、国連の Net-Zero Asset Owner Allianceが設定する「2025 Target Setting Protocol」のほか、Science Based Target initiative(SBTi)、Transition Pathway Initiative(TPI)等をベストプラクティスを確認するための手段として列挙している。さらに、フレームワークに基づく情報開示についてはTCFDの提言を踏まえるとしている。

 

 参加機関は、主に欧州の年金、資産運用機関で占められている。日本勢は、オリックスが親会社であるオランダのRobecoの名があるだけ。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をはじめとする日本の機関投資家や資産運用機関等の対応が求められる。

 

https://www.iigcc.org/news/global-framework-for-investors-to-achieve-net-zero-emissions-alignment-launched-8-trillion-investors-put-it-into-practice/