米証券取引委員会(SEC)、証券取引所ナスダックによる上場企業の取締役にマイノリティー登用をルール化する規則改正を承認。来年から実施へ(RIEF)
2021-08-10 00:50:38
米証券取引委員会(SEC)は6日、証券取引所ナスダックが上場企業に対して取締役に、黒人など人種的マイノリティー(少数派)やLGBT(性的少数派)、女性の登用をルール化する上場規則の改正を承認した。対象企業は約3000社に及ぶ。適用は段階的かつ柔軟に実施するとしている。米証券取引所で取締役の多様性を実施的に義務化するのは初めて。
新規則では、多様な取締役を少なくとも2人登用し、うち1人は女性、もう1人は人種やLGBTとする。小規模な企業や海外企業の場合は、女性2人の登用で要件を満たせる等の柔軟措置も取り入れる。ただ、企業が規則に従わない場合、Comply or Explain方式で、当該企業に理由の説明開示を求める弾力措置も認める。
ナスダックは昨年12月、同規則改正案をまとめ、SECに提出していた。SECの承認により、ナスダック上場企業は1年以内に、役員メンバーの多様性レポートを自社のウェブサイト等で開示する取り組みを始める。さらに2年以内に、最低1人の人種的マイノリティもしくはLGBTの取締役を採用することが求められる。大企業の場合は4年以内に最低2人の多様性のある取締役を持つことが必須とされる。
米コンサルティングの調査によると、2020年の時点で米国の主要企業500社の取締役のうち、白人が82・5%を占めている。女性の割合は26・5%で、人種マイノリティーの女性に限ると5・7%でしかない。ナスダックは今回の規則改正は、取締役会の多様性を高めることが企業の財務パフォーマンスにプラスの影響を与えることを示すデータに基づいているとしている。
取引所が上場企業の取締役の構成をルール化することには、連邦議会や、SEC内でも意見が分かれた。共和党の上院議員12人は今年2月、SECに対して、変更を認めないよう求める共同書簡を送った。同党のベテラン上院議員のパット・トゥーミー氏は、「取締役は能力で選ばれるべきだ」として懸念を表明していた。
しかし、SEC内でも共和党系委員はルール変更に反対した。これに対してゲーリー・ゲンスラー委員長や、民主党系委員が賛成し、3対2の多数決で承認された。ゲンスラー委員長は「投資家が多様性情報を入手できるようにすることで、市場は最も機能するようになる」と述べている。
ナスダックは「今回の規則改正は義務ではなく、企業の環境に関係なく、遵守しなければならないという厳しい目標を設定するものでもない。企業が『Comply』より『Explain』を選ぶ場合は、株主総会の招集通知や自社のウェブサイト等で説明をすればいい。ナスダックは説明の内容を評価はしない」としている。
投資家からはダイバーシティの向上への期待は強く示されている。投資銀行のゴールドマン・サックスは今年1月、ダイバーシティをもたらす人材が取締役会に1人もいない企業の上場は支援しない姿勢を明らかにした。
https://listingcenter.nasdaq.com/assets/Board%20Diversity%20Disclosure%20Five%20Things.pdf