HOME |アジアインフラ投資銀行(AIIB)、気候ファイナンスに2030年までに500億㌦(約5兆7000億円)を展開。投融資の50%以上を同ファイナンスに集中化。金立群総裁が表明(RIEF) |

アジアインフラ投資銀行(AIIB)、気候ファイナンスに2030年までに500億㌦(約5兆7000億円)を展開。投融資の50%以上を同ファイナンスに集中化。金立群総裁が表明(RIEF)

2021-10-27 17:29:51

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 アジアインフラ投資銀行(AIIB)は26日から3日間の予定で、年次総会を開いた。冒頭、金立群総裁は「気候変動対策で各国が協調しないとアジアは壊滅的な気候リスクにさらされる」と述べ、2030年までに500億㌦(約5兆7000億円)の気候ファイナンス資金を展開すると表明した。AIIBは今年初め、2025年までにインフラ投融資の少なくとも半分は気候ファイナンスに充当する方針を打ち出している。

 AIIBの年次総会は26日から3日間の日程でオンラインで開いている。開会式の冒頭で、金総裁は2023年7月1日までにAIIBの活動をパリ協定の目標に適合させると表明するとともに、30年までの500億㌦の気候ファイナンス目標を掲げた。重点的な投融資分野として、低所得国の気候変動への適応とレジリエンスを高める投資のほか、気候変動対応を加速する新技術促進策等を「主要分野」として強調した。

 低所得国への適応ファイナンスは、AIIBが柱とするインフラ投融資全体の半分を気候ファイナンスに切り替える目標での重点分野となる。同行のインフラファイナンスのポートフォリオは、2020年時点で全体の41%を気候関連で占めている。これを25年までに50%以上に引き上げ、国際公的金融機関としての存在感を国際社会に強調する狙いとみられる。

 金総裁は「われわれは歴史的に重要な瞬間に立っている。グローバルな温暖化を防ぎ、地球の脆弱性を守るならば、大胆かつ迅速で広範囲にわたる集団的行動をとる必要がある。今日のわれわれの発表は、AIIBがパリ協定に適合する気候活動を推進するうえでの長期的誓約の強化につながる」と述べた。

 AIIBは気候ファイナンスを増やすため、パリ協定の目標達成に適合する低炭素で気候レジリエントな基準に合致するプロジェクト評価の手順の構築を試行していることも明かした。これらの評価手順は、他の国際公的金融機関と連携して開発を進めている国際的基準やフレームワークに基づいて設定される。

 

 国連によると、気候変動の進行によって途上国で必要となる年間のレジリエントコストは、2030年までに年1400億~3000億㌦と推計される。しかし、現在の途上国へのレジリエントファイナンス額はその5分の1から10分の1の約300億㌦にとどまる。

 

 総裁は「どんな場合でも通用する魔法の解決法はない。適応・レジリエンスに対して、適格にファイナンスすることが求められる。対象としては、洪水防止壁の設置や、建物の基準改定、その他すべてのインフラ機能の強化等であり、これらを実現できるかどうかは我々の対応次第だ。途上国の場合、こうした対策を実現するためには資金へのアクセスが重要になってくる」と強調した。

 

 AIIBは2015年に、中国主導で設立された最も新しい国際公的金融機関。加盟承認国は104カ国・機関。中国の影響力を懸念し、米国、日本は加盟していない。

https://www.aiib.org/en/news-events/media-center/news/index.html