「グローバルグリーン金融センター格付(GGFI)」最新版公表。1位ロンドン、2位ニューヨーク、東京は31位と低迷。「トランジションファイナンス」の取り組み提案。英シンクタンク(RIEF)
2023-04-20 23:52:14
英シンクタンクが公表する世界の金融センターのグリーン度を評価する「グローバルグリーンファイナンスインデックス(GGFI)」の最新版が公表された。それによると、トップは前回(昨年10月)に続いて英ロンドン。1㌽の差で米ニューヨークが前回の3位から1つランクを上げた。上位10位は全て欧米の金融センターで占められ、アジア勢は11位にシンガポール、東京は前回から7つランクを落し、31位と冴えない順位だった。
調査は英シンクタンクのZ/YenとLong Financeが2018年から半年ごとに実施している。今回は、UAEのアブダビ・グローバル・マーケットも加わり、3者共同でグローバルな金融センター126都市を対象として調査した。格付はそのうち86都市をインデックス評価をして付与した。
評価は第一段階として、各国の金融センターの専門家など633人に対するオンライン質問での格付評価(10段階)を行い、次いで、国連、世界銀行、OECD等を含む第三者機関が公表する150の評価要因に基づいた定量的な評価を加味して算出した。
評価は全体格付とともに、各センターを、グリーンの「深み(Depth)」と「品質(Quality)」に分けてスコアリングも示している。「深み」は、グリーンファイナンスと、CO2排出量の多い企業等へのファイナンスを意味する「ブラウンファイナンス」との比率などで評価。「品質」は、市場の大きさとは別に当該センターでのグリーン取引の評価や、ラベリングの採用状況などを評価した。
全体の評価では、最もスコアが高かったのがロンドン(642)、次いで一点差でニューヨーク(641)、3位ストックホルム(621)と続く。600点以上の都市は21都市。このうちほぼ半分の10都市が欧州。6都市が北米(米・カナダ)、3都市がアジア(シンガポール11位、ソウル15位、上海20位)、2都市がオセアニア(シドニー13位、ウェリントン18位)。
東京は前回の24位から7つランクを下げて31位。スコアも580㌽で、アジアトップのシンガポールより30㌽、ソウルより16㌽低かった。日本勢では42位に大阪(569㌽)が入っている。大阪も前回より10ランク下げた。日本は政府が化石燃料維持を掲げていることが国際的にも知られており、「グリーン金融センター」からほど遠いとの評価を受けた形だ。
東京は同じシンクタンクが実施した金融センター全般を評価する「グローバル金融センターインデックス(GFCI)」の最新報告でも、前回よりランクを5つ下げ、21位と低迷している。https://rief-jp.org/ct6/133780?ctid=69
グリーンファイナンスの「深み」評価では、ニューヨークがトップでロンドンは2位、「品質」評価ではロンドン1位、ニューヨーク2位と両金融センターが競い合っている。
今回の調査では、「トランジションリスク」にもフォーカスしている。同リスクとして、政策リスク、法的リスク、技術リスク、市場リスク、評判リスク等を挙げている。このうち、政策リスクについては、「気候対応の政策は流動的で、補助金、減税等も政治家の思い付きでしばしば変わるリスクがある」とし、法的リスクは「気候対策への注意義務不足で訴訟されるリスク」等と位置付けている。
調査では、2019年の第3回調査で主要金融センターの上場企業の化石燃料事業収入比率を評価したデータを再掲(現状もほとんど変わっていないとして)している。それによると、モスクワは58%と突出。次いで、バンコク(36%)、ワルシャワ(33 %)、アムステルダム(32 %)、ボンベイ(23%)、ロンドン(21%)等となっている。
分析では、トランジションリスクについての政策の欠如のほか、低炭素支援や再エネ事業等での発展段階に差が大きいことから、トランジションリスクと物理的リスクについては、さらなる調査が必要とする一方で、低炭素化経済へのトランジションを市場に示す機会を重視する必要性にも言及している。「低炭素へのトランジションは不可避であり、さもなければ広範囲な社会的混乱に直面する。トランジションの新たな市場と技術を備えた金融センターが『トランジションの先駆者(Early Mover)』として 登場すべきだ」と指摘、金融センター主導の展開に期待を示している。
https://www.longfinance.net/media/documents/GGFI_11_Report_2022.04.20_v1.1.pub.pdf