一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

 　世界の国際金融センターの実力を評価する「グローバル金融センターインデックス（GFCI）」の35回目の調査結果（今年3月）が公表された。上位のトップ3は、前回調査（昨年9月公表）と同様、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールの順で変わらず。東京は前回の20位から一つランクをあげて19位となった。しかし、アジア太平洋地域では、シドニーに抜かれ、前回の7位から8位に一つランクを落とした。アジアでは韓国・ソウルが、総合ランクで10位であると同時に、今後、重要性が高まる市場のトップにランクされるなど注目を集めているのに対して、東京は海外投資家からは魅力が乏しい地域としての評価に甘んじている。

　GFCI調査は英コンサルタントのZ/Yenが2007年から年2回の頻度で実施している。今回の調査対象となった国際金融都市は世界で133都市。これらの都市を「グローバル金融センターインデックス（GFCI）」で評価し、スコア化した。評価手法は、世界銀行やOECD等が公表する145の基本的項目について定量的に評価し、そこに、各地の市場関係者等からのアンケートでの評価を加味して総合スコアをはじく手法で121都市をランク付けした。評価に参加した市場関係者はグローバルベースで8494人。https://rief-jp.org/ct6/139288?ctid=

   その結果、トップ10は上位1～5位までは、前回と同様で、ニューヨークをトップとし、ロンドン、シンガポール、香港、サンフランシスコの順で変わらず、ランクを下げたのは6位だったロサンゼルスが8位に、8位だったワシントンが2位となったのが目につく。反対にジュネーブが前回の10位から7位に躍進したほか、上海（6位）、ソウル（10位）、深圳（12位）がそれぞれ一つずつランクを上げた。

　東京は2022年3月にはベスト10以内の9位だったが、その後、下げ続け、昨年3月には21位までランクを下げた。その後、下げ止まり、昨年9月は20位、今回は19位と一歩ずつ戻している。しかし、他の成長市場が一気にランキングを駆け上がる動きと比べると、市場自体は政府主導でガバナンス効果の評価はあるものの、市場の柔軟性、成長度合い、フィンテック等の金融技術の展開度等の点でいずれも、目立たず、「中程度のローカル金融センター」の座に甘んじている。

　東京の国際金融センターとしての評価の低さと対照的なのが、韓国・ソウルだ。総ランキングでも東京を倍近く引き離す10位に着けているのに加え、GFCIが市場関係者に質問した「今後2～3年において、より重要になると考えられる金融センター」の設問ではソウルが、2位のシンガポールの2.5倍も高いスコアの177㌽をあげ、ダントツで各国の金融マンの関心が集中していることを示した。

　ソウルが「近未来の国際金融センター」としての期待が高いのは、GFCIが各金融センターの競争力の6分野別評価で、ソウルは人的資本で7位、インフラで10位、金融産業の成長力と、市場の評判・一般で各12位、ビジネス環境で13位と、すべての分野でベスト10前後の評価を得ている点が大きい。東京は、評判・一般の評価で14位になっただけで、他の分野ではランク外となっている。政府主導の旧態的な東京市場と、市場主導のソウルとの差は今後さらに拡大しそうだ。

　同「近未来の国際金融センター」ランキングでは、上位15位のうち8都市が、日本以外のアジア太平洋地域の都市で占められている。東京はアジア太平洋でも「国際金融センター」としての評価を得られない、「ローカル市場」に留まっていることが再認識された格好だ。東京都は「国際金融都市構想」を掲げているが、海外の市場関係者には全く相手にされておらず、国内の行政機関と金融関係者の間での連携に留まったままであることを示す。

　東京だけではない。大阪も前回調査からランクを4つ下げ、イスラエルのテルアビブより1点だけスコアが上の、全体の47位と低迷している。日本の金融は市場環境も、各金融機関の行動力も、「ピンチな状態」にあるという認識も、国内では十分ではないようだ。

https://www.longfinance.net/publications/long-finance-reports/the-global-financial-centres-index-35/

https://www.longfinance.net/media/documents/GFCI_35_Report_2024.03.21_v1.0.pdf