EUの「企業サステナビリティ報告指令(CSRD)」に基づくダブルマテリアリティ情報を円滑に開示するための「10の道しるべ」。オランダの金融市場機関「AFM」が公表(RIEF)
2024-07-11 01:57:10

(写真は、オランダの「金融庁」のAFM本部)
オランダの金融監督当局であるオランダ金融市場機関(AFM)は、2024年からEU企業の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が実施に移されたことを受け、同指令で企業が求められるダブルマテリアリティ開示のための「10の道しるべ(Waypoints)」を公開した。CSRDではEUの欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に基づき、企業価値への環境・社会要因の財務的影響に加え、企業活動による環境・社会へのインパクトの開示の両方が求められる。AFMは、企業が、この両方のマテリアリティ開示を円滑に実施するための「手順」を示した形だ。
EUのESRSは、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)との相互操作性(Interoperability)をとる一方で、伝統的に企業活動による環境・社会への影響についても開示を求める枠組みを示している。CSRDは同基準に基づく情報開示をEU企業およびEUで一定の活動をする非EU企業に求めるもので、AFMはその開示が適正に行われるための道筋を示した形だ。
CSRDに基づくダブルマテリアリティ開示は今年会計基準から義務化され、来年の決算末時に開示されることになる。だが、すでに多くのEU企業等が、従来の欧州非財務上開示指令(NFRD)に基づき、自主的にダブルマテリアリティ開示を実施している。このため、EU企業の同開示に対する取り組み内容や手法等はすでに多様になっていることから、これらを統一する狙いもあるようだ。

AFMはESRSの基準に従うとともに、各企業による2023年会計年度の報告での「グッドプラクティス」を踏まえ、10の「道しるべ」を選んだ。その手順は「ステークホルダーエンゲージメント」と、サステナビリティ課題等を確認するための「デューデリジェンス」、透明性を持つ形で分析する「ダブルマテリアリティ分析」の3分野に分けられている。
▼「ステークホルダー・エンゲージメント」では、①ステークホルダーエンゲージメントの代表性で透明性があること②ステークホルダーから受け取ったインプットを開示するーーの2点。
▼「デューデリジェンス」では、③サステナビリティに関する事項を特定する④OECDガイドラインなどの国際的な枠組みを活用する⑤デューデリジェンスとダブルマテリアリティの関係を開示するーーの3点。
▼「ダブルマテリアリティ分析」は、透明性をもって分析を開示することを基本とし、⑥バリューチェーンの役割を開示する⑦事業活動と、特定されたマテリアル課題とを関連付ける⑧サステナビリティ課題のマテリアリティ評価に関する分析(洞察)を提供する⑨インパクト、リスク、機会のマテリアリティを開示する⑩短期的および長期的な影響とリスクの関係を報告する

AFMでは、CSRDの情報開示においては、企業が抱えるマテリアリティ課題とその評価について、明確で透明性のある方法で開示することが重要、と指摘している。金融当局にとっても、CSRDの開示報告書において、これらの手順に沿ったマテリアリティ開示がなされることで、企業間の比較やリスク評価が容易になる期待もあるようだ。
AFM理事のハンゾー・ファン・ビューセコム(Hanzo van Beusekom)氏は「ダブルマテリアリティに関する分かりやすく透明性のある(ステークホルダーとの)コミュニケーションは重要だ。われわれの評価では、それは企業にとって可能だ、ということが示されている。われわれの調査は、ダブルマテリアリティの分析を実施するか、あるいは使用する際に、誰もが恩恵を受けることができる10の道しるべを提供した」と説明している。
https://www.afm.nl/en/sector/actueel/2024/juli/tien-navigatiepunten-CSRD
Report 10 waypoints for CSRD – double materiality (pdf, 1,98MB)