HOME11.CSR |米CalPERS、 タバコ産業への投資除外規定を継続するとともに、外部委託分にも拡大。30億㌦の推定累積投資損失よりも、社会的影響を重視(RIEF) |

米CalPERS、 タバコ産業への投資除外規定を継続するとともに、外部委託分にも拡大。30億㌦の推定累積投資損失よりも、社会的影響を重視(RIEF)

2016-12-26 10:28:30

CalPERSキャプチャ

 

  米最大の公的年金のCalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)は、現行のタバコ産業への投資除外措置の是非を審議した結果、継続することを決めた。タバコ産業の高投資リターンよりも、社会生活に負の影響を与える産業へ投資しないことが、フィデシャリーデューティー(受託者責任)を果たすと改めて確認した形だ。

 

 CalPPERSの投資委員会がこのほど、決定した。CalPERSは2000年、タバコ産業が健康被害で訴訟リスクと、規制リスクに直面したことから、同産業向けの株、債券投資からの引き揚げ(Divestment)を決定した。その後、2015年に、理事会はこの投資除外の影響を、コンサルタント会社のWilshire Associatesに委託していた。

 

 Wilshireの分析によると、タバコ産業への投資を除外したことで、2001年から14年までのCalPERSのポートフォリオの運用成績は、タバコ産業に投資していた場合に比べて、推定で約30億㌦(約3500億円)減少した、との試算を示した。

 

 これを受けて、CalPERSの投資委員会は今年4月、ステークホルダーの見解、タバコ産業の将来分析などを総合的に分析を進めてきた。今回の投票の結果は、投資資金のうち、現行の内部運用での投資除外を続けると同時に、新たに外部の資産運用機関への委託分も、タバコ産業への投資を除外するとした。

 

 投資委員会の議長を務めるHenry Jones氏は「すべての投資除外条件を定期的にレビューすることは、フィディシャリーデューティーに沿うもの。タバコ産業投資のすべてのリスクとベネフィットを注意深く検討した結果、委員会は投資除外を継続し、さらに拡大することを決めた」と説明している。

 

 CalPERSのCIOのTed Eliopoulos氏は、こうした投資委員会の決定を歓迎する声明を出した。今回の決定は、公的年金として投資リターンを多少、犠牲にしてでも、投資先企業の社会的影響を重視する姿勢を明確にしたといえる。

 

 日本の年金などの長期機関投資家や資産運用機関は最近、Engagement重視を強調するところが増えている。だが、その活動の大半は、株主総会での投票行動にとどまっている。CalPERSのように、投資資金の引き揚げ行動と組み合わせてこそ、Engagementは効果を発揮する。CalPERSの「強い姿勢」を見習ってもらいたい。

 

 CalPERSの運用資産は3003億㌦(約35兆1000億円)。運用成果の向上に積極的で、ヘッジファンド投資や新興国投資にも力を入れている。また投資先企業の経営に直接注文を付けるEngagementにも積極的。環境・社会・ガバナンス(ESG)課題にも取り組みを強めている。

https://www.calpers.ca.gov/page/newsroom/calpers-news/2016/votes-expand-tobacco-investment-ban