HOME11.CSR |欧州開発銀行(CEB)、初の「Social Inclusive Bond(社会的包摂ボンド)」を5億ユーロ発行。難民・移民対策で地域の格差是正事業等に資金供給(RIEF) |

欧州開発銀行(CEB)、初の「Social Inclusive Bond(社会的包摂ボンド)」を5億ユーロ発行。難民・移民対策で地域の格差是正事業等に資金供給(RIEF)

2017-04-07 18:39:23

 

 欧州公的金融機関の欧州開発銀行(CEB)は、欧州域内での格差是正のために零細中小企業育成や職業訓練などを支援する、初のSocial Inclusive Bond(SIB:社会的包摂ボンド)を発行した。発行額は5億ユーロ(約585億円)。ESG投資に力を入れる欧米の機関投資家等が競って購入した。

 

 CEBは第二次大戦後に欧州域内で広がった難民対策などのために設立された欧州連合(EU)でもっとも古い公的金融機関として知られる。その後も、東欧諸国のEU加盟などを受けて、社会的連帯を強化するために、移行加盟国の経済力の向上や地域社会の活性化などを資金面から支援してきた。2008年のリーマンショック移行の欧州経済危機以降は、EU域内での社会的格差問題に取り組んできた。

 

 CEBは2017年から19年の3ヵ年の行動計画を立案、①欧州の持続可能で落伍者を出さない包摂的な成長②難民、社会的生活困窮者、移民らの社会的統合③適応と回避両面での気候変動対策--の3分野の改善に力を入れていく方針を示している。こうした社会課題を解決するためのファイナンス手段の一つとして、 新たにSIB発行を決めた。

 

 CEBキャプチャ

 

 発行された債券は期間7年で、クーポンレートは0.125%。利回り0.221%。Moody’sとFitch1がAA+、S&PがAA+と高い格付けを付与した。またグリーンボンド原則(GBP)を発行している国際資本市場協会(ICMA)が定義するソーシャルボンド基準への準拠について、ESG評価会社のSustainalyticsがセカンド・オピニオンを付けた。

 

 調達資金の使途は、各地域住民が手ごろな価格で購入できる社会的住宅の建設、若者らへの教育、職業訓練、零細・中小企業(MSMEs)向けの雇用支援活動等に振り向けられる予定。国連の持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる貧困、教育、男女平等、持続可能な都市・コミュニティづくりなどの目標にも資する。

 

 SIBボンドの設計はフランスのクレディ・アグリコル(CA-CIB)が担当し、共同幹事にはCA-CIBのほか、ゴールドマンサックス、ラボバンクがついた。EUの公的金融機関による初のSIBであることから、年金基金等の募集が集中、10億ユーロ以上の購入希望となった。

 

 結果的にフランス(29%)、ドイツ(20%)など、欧州域内の機関投資家が大半を購入したが、アジアの機関投資家も9%分の投資をした(日本の機関投資家が含まれているかは不明)。投資家の属性は、資産運用機関(30%)、銀行(25%)、中央銀行および公的機関(24%)年金基金・保険(21%)となっている。

 

 CEB総裁の Rolf Wenzel氏は「このボンドはCEBにとって画期的な債券発行である。欧州社会の結束を強化するための重要で、大きな一歩となるだろう」と強調している。

 

 欧州はシリアなどの戦火の続く中東諸国からの難民問題で各地で摩擦が生じている。困難な難民受け入れ問題や、域内のEU市民の移動問題にどう対処するかは、今後のEUの将来を左右しかねない課題となっている。この未曾有の時に、大戦後の混乱期を乗り越えるために設立されたCEBが、新たに「社会的包摂」を掲げて地域再生を打ち出したことは、EUがあくまでも統合の基本理念を踏まえていこうとする姿を象徴しているといえる。