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東南アジアでの熱帯雨林の違法伐採や周辺住民への人権侵害などに、「日本の大手金融機関や商社、 GPIFなどが深く関与」。環境NGOのRANが報告書で指摘(RIEF)

2017-04-25 18:11:45

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 環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、東南アジアで森林破壊や森林関連事業での人権侵害などを引き起こしているとする日本とアジアの8企業をリストアップした報告書を公表した。また、これらの企業の森林部門が2010年以降、280 億㌦以上の資金を主要銀行、保険会社等から受けていたとして、それらの金融機関の名前と投融資比率も開示した。RANは「銀行や投資家は無責任な企業に対して資金提供を断つ社会的責任がある」と強調している。

 

 RANが公表したのは「投資家には責任が ある(Every Investor has a Responsibility)―森林と金融調査レポート」と題した報告書。英語版と日本語版を同時に公表した。

 

 報告書は、東南アジアの熱帯雨林地帯で、森林破壊 と周辺住民への人権侵害を繰り返しているパーム油、紙パルプ、ゴム、木材企業 8社を列挙した。8社のうち3社は日本企業で、王子ホールディングス、丸紅、伊藤忠。このほか、フェルダ・グローバル・ベンチ ャーズ(インドネシア)、インドフード(インドネシア)、IOI(マレーシア)、ウィルマー(シンガポール)、APP(中国) の 8 社が指摘された。

 

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 RAN はこれらの企業について、自社やサプライチェーンの事業に おいて、児童労働や強制労働、先住民族からの土地の搾取、熱帯林皆伐、炭素を豊富に含んだ 泥炭地の破壊、現地の汚職に便乗した利益享受、違法に製造された商品の売却など、社会およ び環境問題に関与している事実が明らかになった、としている。RANは、各社が、社会問題や環境問 題への取組みについての誓約や方針を公表しているが、問題は改善されていない、と指摘している。

 

 これらの企業と金融機関の関係は、機関投資家による最新報告(2017 年 2 月付)で、 8 社の各森林部門事業は、債券お よび株式による投資で、合計 65 億㌦以上の資金を得ているとし、2010 年以降これまでに調達した投融資資金の総額は 280 億㌦以上としている。

 

 報告書では、会社ごとに上位の投資と融資の機関別の比率が示されている。そこに明記された主要な金融機関は、地元の金融機関に加えて、日本の3メガバンク(三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三菱 UFJ フィナンシ ャル・グループ)のほか、中国開発銀行、RHB バンキング、CIMB グループ、HSBC 、Citi などの名があがっている。

 

 また投資機関としては、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のほか、バンガード、エン プロイーズ・プロヴィデント・ファンド、ブラックロック、およびディメンショナル・ファン ド・アドバイザー等が含まれている。

 

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 RANの「森林と金融キャンペーン」ディレクターのトム・ピケン氏は「銀行や投資機関は、自らが資金を提供している事業が熱帯林破壊や現地の人々からの搾取を 行っているという事実を認識する倫理的、経済的な義務がある。金融機関は、自 分たちの投資によって、環境、社会、そして最終的には自らに対し多大なダメージを与えてい ると理解する必要がある」と指摘している。

 

 さらに、「銀行家や投資家の人々は、こうした事態から目を背けるのを止め、自分たちが受け取って いる短期的な配当や数百万㌦のボーナスが実際は何を犠牲にして生みだされているのかを認 識しなければならない。金融機関が森林破壊や人権侵害には融資をしないと誓約しない限り、 気候変動の大きな要因である森林破壊に歯止めをかけようとする国際努力は徒労に終わる」と警告している。

 

 RAN は今回の報告書で、銀行と投資機関に対し、熱帯林に害を与えている商品の製造に関 わるすべての企業、およびそれに関連する川下のサプライチェーンについて、投融資方針を策定するよう求めている。そのうえで、銀行や投資家は、デューディリジェンス によるスクリーニングを強化し、資金提供先の企業の業務をきちんとモニターして、無責任な 企業に対しては資金提供を断つ社会的責任がある、と断じている。

 

 世界全体での森林破壊・消失は年々増大し、2000 年から 2012 年にかけて、日本の国土の約 3 倍の面積の熱帯林が失われた。破壊と消失が集中している最も深 刻な地域の一つが東南アジア。その要因は、グローバル企業によるパーム油、紙パ ルプ、木材、ゴム、その他の「ソフト・コモディティ」への需要が急増しているためだ。消失した熱帯林のうち、ほぼ半分が商業的用地に違法に転換されており、その半分は輸出用商品の生産に充てられている。こうした商品を受け入れている日本をはじめとする先進国の消費者の認識も重要になっている。

http://japan.ran.org/?p=1017