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国際環境NGOら65団体。エクエーター(赤道)原則の全面改定を公開書簡で銀行団に要請。パリ協定の目標達成と、先住民族の権利擁護を明記せよ、と。(RIEF)

2017-08-30 08:00:39

DAPLキャプチャ

 

  「エクエーター(赤道)原則」は全面改定すべきーー。グローバルに活動する国際環境NGOや人権NGO65団体が連名で、国際金融機関が大規模プロジェクトファイナンスにおいて、ESG配慮を図るために導入しているエクエーター原則の全面改定を求める公開書簡を「エクエーター原則協会(EPA)」の理事会に送付した。

 

 公開書簡では、まず、地球の気温上昇を2度上昇未満に十分に抑制し、できれば1.5℃以内に抑えるパリ協定の国際目標の達成を、エクエーター原則署名金融機関の、明確な公約とするよう求めている。その公約実現のため、新たな化石燃料の採掘、輸送、発電へのファイナンスを、協定の名の下で、否定するよう呼びかけている。

 

 もう一つは先住各民族の権利擁護だ。先住民族の伝統的な領土における住民同意のないインフラ事業開発については、世界中のどこであっても、金融機関はそうした開発へのファイナンスをせず、先住民族の権利を十分に尊重することへのコミットメントを盛り込むよう求めている。

 

 今回、各NGOが連名で、エクエーター原則の全面改定を求めるのは、10月後半(23日)に、ブラジルのサンパウロでEPAが年次総会を開くため。同総会で今回の提案の趣旨に沿って原則の改定を審議するよう求めている。審議に際しては、NGOや先住民族の代表をはじめとする外部のステークホルダーとの協議プロセスを設けることも要請している。

 

DAPLの建設に反対する支援者たち
DAPLの建設に反対する支援者たち

 

 エクエーター原則署名機関に対して、温暖化対策と先住民の権利擁護へのコミットメント要請は、NGOからだけ出ているわけではない。銀行団自らの間からも声が上がっている。

 

 今年5月に、フランスやオランダ、イタリアの10のエクエーター原則署名の金融機関が連名でEPAに対し、①現行の原則の内容では先住民族の権利擁護が十分でない②原則の土台である国際金融公社(IFC)のパフォーマンススタンダードに比して問題がある――として、見直しを求める声明を出している。

 

 10の金融機関は、フランスのSociété Générale、BNP Paribas、Credit Agricole CIB,オランダのABN Amro,Raabo Bankなど。65のNGO団体は、こうした金融機関自らの問題提起を、より明確化して要請した形でもある。

 

 10 金融機関は具体的な「問題プロジェクト」は名指ししていない。だが、念頭には、米国のトランプ政権下で、米先住民族の居留地を無視する形で推進されたDakota Access Pipeline(DAPL)計画がある。同計画には、エクエーター原則に署名している日本の3メガバンクをはじめ、欧米のエクエーター銀行も資金供給をしている。10金融機関は、こうした経緯を踏まえ、原則の本来の趣旨がゆがめられるケースが出ていることに憂慮を示した。http://rief-jp.org/ct7/67857

 

ホンデュラスのAgua Zarcaのダム建設に反対する先住民族ら
ホンデュラスのAgua Zarcaのダム建設に反対する先住民族ら

 

  先住民族の人権侵害事例は、DAPL以外にも各地で起きている。たとえばホンジュラスのAgua Zarcaダム建設計画では、環境保護活動に従事していた環境保護活動家が暗殺されるなどの過激な弾圧が、政府が関連する形で起きている。そうした事業の背景でも欧米の金融機関からの融資が流れている。http://rief-jp.org/ct4/66162?ctid=0

 

 エクエーター原則は、2003年に国際金融機関が、環境に影響の大きいプロジェクトファイナンスに際して、金融機関独自の視点で環境・社会リスク管理を図るためのプロセスを定めた民間原則である。基本はIFCのスタンダードに準拠している。これまで2007年に一回、2013年にもう一回、それぞれ改定されている。いずれもIFCのスタンダード改定に連動した見直しだった。

 

 今回はIFCの定期的な改定とは別だが、すでにIFCの基準に盛り込まれている先住民族対応等との整合性を、エクエーター原則署名機関が自らの判断で、取り込むかどうかが焦点だ。温暖化対応と人権問題をともに、プロジェクトファイナンス上の重要なリスクとして認識できるかだ。

 

 現在、同原則に署名している日本勢は、3メガバンクのほか、三井住友銀行、農林中金の5金融機関。グローバルベースの署名総数は91機関に上る。



 今回のNGO公開書簡に署名したのは、エクエーター原則の発足以前から金融機関の国際プロジェクトファイナンスのルール化を求める活動を展開しているオランダの BankTrackをはじめ、 Greenpeace、Rainforest Action Network(RAN)、シェラクラブなどの国際的NGOら。

 

 BankTrackの代表のJohan Frijins氏は「現行のエクエータ原則は、パリ協定が発効する前のもの。今日、米国で起きているハリケーン『ハービー』による大洪水や、バングラデシュの洪水などを踏まえると、金融機関のリスクマネジメントツールとしての同原則は、現実に即して早急に改定する必要がある」と指摘している。


 またAmazon Watchの代表者、Leila Salazar-López氏は「DAPLのスタンディグ・ロック(米先住民族の居留地)からアマゾンの熱帯雨林まで、先住民族コミュニティは、生活の場となる土地の権利、聖なる地の保全、 環境保護を金融機関に求めている。短期的な利益追求ではなく、権利、環境、気候、そして再生可能エネルギーへの大胆な投資によって未来が拓かれることを、署名金融機関に伝える運動の一つだ」と強調している。

 

https://www.banktrack.org/news/equator_banks_called_upon_to_act_on_climate_change_and_indigenous_peoples_rights

https://www.banktrack.org/download/letter_from_10_banks_to_epa_secretariat_on_designated_countries_eps/170522_letter_banks_on_designated_countries.pdf