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香港金融界、独自のグリーン投資銀行設立案浮上。シンガポールと競うアジアのグリーンファイナンスのハブ市場をめぐる攻防の様相も(RIEF)

2017-10-19 00:19:29

hkgkキャプチャ

 

  アジアのグリーンファイナンスのセンターの座を巡って、シンガポールと競う香港で、「グリーン投資銀行(グリーンバンク)」設立構想が浮上しているという。香港の金融界で組織する「Financial Services Business Council (FSBC)」が同銀行設立に向けた概念案をとりまとめた。

 

 グリーン投資銀行(あるいはグリーンバンク)はすでに、先進各国で設立されている。世界最初とうたわれた英国のグリーン投資銀行(EIB)は本年、民営化され、豪マッコーリー銀行に23億ポンド(約3200億円)で売却された。だが、米国ではニューヨークと、コネチカット両州に州立のグリーンバンクがあるほか、マレーシアなどにも設立されている。

 

 FSBCは隣接する中国市場で、今後もグリーンファイナンスが引き続き堅調に推移することを念頭に、香港をグリーンファイナンスの国際センターとして発展させることを目指すとしている。その触媒役として、グリーン投資銀行の設立を検討することを提言している。

 

 特にFSBCが意識するのがシンガポールの動きだ。同国の証券取引所は、今年からグリーンボンドを同国市場で上場する場合、第三者評価の費用を証取が資金援助を約束するなど、グリーンファイナンス企業やプロジェクトの誘致に力を入れている。

 

 グリーンファイナンスによって、経済・環境要因の収斂を増大させて、新たな投資機会を作り出し、グローバル成長につながる分野を拡大することを目指しているわけだ。香港にグリーン投資銀行が設立されれば、そうした成長の機会を取り込み、アジアのグリーンファイナンスのセンターに発展することが可能、との判断だ。

 

 今回の提案は、2015年に中国人民銀行が「地方政府は民間資本の資金供給によってグリーンバンクの設立を奨励し、促進すべきだ」との勧告を出したことを受けた形とされる。

 

 FSBCの概念ペーパーは、OECDが24日にパリで開く「グリーン投資ファイナンス」会合において正式に採択される予定で、明確な方針を踏まえた政策展開は、民間資金を動かし、グリーンファイナンスをスケールアップするためのグリーンボンドの役割を高める、などの視点が盛り込まれている。

 

 すでに香港は、グリーンボンド発行では地域リーダーの役割を果たしている。2015年以来これまでに、香港域内で5本のグリーンボンドを発行し、総額は18億㌦に達している。一方、ライバルのシンガポールはグリーンボンドの発行では2件だけで、発行額も合わせて5億7100万㌦と小さい。

 

 しかし、シンガポールの金融当局のMonetary Authority of Singapore(MAS)は、同国市場にグリーンボンドを上場する発行体に対して、外部評価費用を補助金でまかなうことを宣言している。そうした”アメ”の政策の一方で、シンガポールの証取は、サステナビリティレポートの提出を、Comply or Explainベースで求め始めている。

 

 こうしたシンガポール当局の姿勢に対抗するため、香港では、当局も関与した温暖化税の導入や、中国版のカーボン排出権取引制度の発足を前にして、カーボンクレジット取引や、CO2削減のための投資事業へのファイナンスなどが取り沙汰され、いずれも新設する「グリーン投資銀行」が対応する狙いでもあるようだ。

 

 アジアのグリーンファイナンスセンターの競い合いは、今後もさらに激しく動くとみられる。そうした香港、シンガポールの両金融当局や金融界の動きに対して、わが日本の官民はどう対応していくのか。ちょっと姿が定かではない、ようにも映る。

http://www.eurocham.com.hk/events/breakfast-seminar-to-launch-an-fsbc-concept-paper-on-the-potential-for-a-hong-kong-green-investment-bank