欧州最大の運用額を誇る資産運用会社のアムンディは、欧州委員会が推進するサステナブルファイナンス行動計画で、ESG要因を第2次金融商品市場指令(MiFID Ⅱ)規制に導入する提案をしたことについて、「官僚的な受け狙い(administrative gimmick)の危険性がある」などと、否定的な意見を表明した。
欧州委員会は5月後半、10項目のサステナブルファイナンス行動計画のうち、①EU共通のサステナブルファイナンスのタクソノミー確立②資産運用機関や機関投資家等のフィデシャリーデューティー(FD)の法制化③金融商品の低炭素ベンチマークのルール化④MIFIDⅡ(金融商品市場指令Ⅱ)とIDD(保険商品販売指令)を改正し、資産運用等の判断にESG評価を含めるーーなどの法制化案を提案している。
現在、その提案に基づいて関係機関、業界等とコンサルテーションを実施中だ。アムンディはその中で④を中心に、意見表明を行った。アムンディ自体、ESG要因を評価した資産運用商品等をグローバルに展開している。
ESG配慮の投資商品がMiFID ⅡとIDDの法規制対象になると、顧客に対する商品販売に際して、顧客がESG配慮を選択するかどうかを確認する手続きなどが発生する。またESG評価の定義になるタクソノミー自体、欧州委員会がこれから確立しようという段階でもある。アムンディは、こうした環境下でESGプロセスを法制化すると、運用機関側のコストと責任が増大することを嫌ったとみられる。
さらに、MiFID Ⅱは今年1月に改正法が施行されたばかり。各金融機関はMiFID Ⅱ対応をしたところなのに、改めて追加対応を迫られることになる。欧州メディアの報道によると、アムンディは欧州委のコンサルの場で「(法施行後で)タイミングが悪い」「不均衡な障壁を作り出す」などと述べたという。ただ、欧州の資産運用業界において、責任投資への関心が十分でない状況を是正しようとする欧州委の姿勢には評価を示した。
同じく欧州委のコンサルを受けた欧州の資産運用機関の団体、欧州ファンド資産運用協会(EFAMA)も、「欧州委員会の提案は、資産運用市場において、追加コストを生み出し、あいまいさ、混乱を作り出すだろう」と反対姿勢を強調した。
EFAMAは欧州委が目指すサステナブルファイナンス政策の全面的な導入について、一気に法制化するアプローチではなく、時間をかけて段階的に進める「フェーズイン・アプローチ」を提案、資産運用協会との協議をさらに進めるよう求めた。EFAMAの加盟機関は合計230兆ユーロの運用資産を抱えている。