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国連「緑の気候基金(GCF)」の事務局長にグレマレック氏(仏)。日本推薦の菅沼健一・気候変動担当政府代表は敗れる(RIEF)

2019-02-26 01:01:01

Yanic1キャプチャ

 国連「緑の気候基金(Green Climate Fund)」の事務局長(Executive Director) ポストに、女性の地位向上を目指す国連「UNウィメン」事務次長のヤニック・グレマレック氏(仏)が就任する。同ポストには日本も菅沼健一・気候変動交渉担当政府代表を擁立したが、国連人脈に阻まれた格好となった。

 26~28日に開くGCFの理事会で正式に承認する。GCFは、途上国の温室効果ガス削減対策と気候変動の影響への適応策を資金面から支援するため、2010 年のメキシコ・カンクンでのCOP16で設立が合意された。2015年から稼働している。韓国仁川市ソンドに拠点を置く。

 

 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)でも毎回、最大の焦点となるのが先進国から途上国への資金協力問題。それだけに、GCFの資金配分をめぐって各国間での摩擦調整が大きな課題となる。前任事務局長は、昨年夏、内部対立を受け、任期半ばに辞任している。

GCF2キャプチャ

 

 新事務局長に就任するグレマレック氏は、国連職員として、ほぼ30年の経験を持つ。国連UNウィメン事務局次長では、プログラムや計画立案と、政策調整を担当してきた。

 

 その前は、GCFと同じく途上国に環境資金を供給する「地球環境ファシリティ(GEF)」を支援する形で国連開発計画(UNDP)の関係機関コーディネーター代表を務めている。UNDP時代は12年以上、ベトナム、中国、バングラデシュでの開発促進担当の責任者のポストを歴任。長年の経験で、途上国の人脈を豊富に抱えるほか、開発現場の実情にも長けている。

 

 GCFの事務局長は昨年7月までオーストラリア出身のHoward Bamsey氏が務めていた。オーストラリアで長年、エネルギー・環境分野の政策官僚として活躍、気候変動・エネルギー効率化省の事務次官を務めたベテランだが、理事会後に突然辞任を表明、以後、空席になっていた。http://rief-jp.org/ct8/80684

 

 このため日本政府は、気候変動交渉担当代表の菅沼健一氏を候補として推薦した。同氏は過去にウィーンやジュネーブ国際機関の日本政府代表部を務めたほか、第3回国連防災世界会議担当大使、駐ブルネイ、駐スリランカの両大使などを務めた経験がある。http://rief-jp.org/new/85667?ctid=71

 

 GCFには、日本のほか欧米諸国など43カ国(うち9カ国は途上国)と都市・地域(パリ市、ベルギー・フランダース政府等)が拠出を表明、拠出表明総額は約103億㌦。ただ、最大の30億㌦を出資する予定だった米国は、オバマ前政権時に10億㌦を出資した後、トランプ政権は拠出を凍結した。この結果、15億㌦の拠出表明した日本が実質的に最大の出資国の座にある。

 

 外務省は「日本はGCFの最大の出資国として、GCF組織のスムーズな運営について、国際社会のためにも、また国内の納税者のためにも、最大の責任を負っている」として菅沼氏を擁立した。だが、結果的に、国連人脈のカベを打ち破れなかった。

 

 任期途中で辞任したBamsey氏は、今年1月、国連機関が支援する国際機関の「グローバル・ウォーター・パートナーシップ(GWP)」(本部、スウェーデン)の代表に転じている。

https://www.greenclimate.fund/home