HOME6. 外国金融機関 |英チャールズ皇太子、天皇陛下の即位の礼に出席後、台風19号被害を念頭に「金融界はサステナブルファイナンスに動くべき」と、英金融界に呼び掛け。日本の金融界も耳を傾けて(!)(RIEF) |

英チャールズ皇太子、天皇陛下の即位の礼に出席後、台風19号被害を念頭に「金融界はサステナブルファイナンスに動くべき」と、英金融界に呼び掛け。日本の金融界も耳を傾けて(!)(RIEF)

2019-10-29 07:52:40

Charles1キャプチャ

 

  先週開かれた天皇陛下の即位の礼に出席した英チャールズ皇太子は、訪日中の英紙インタビューで、台風19号による日本の被害を踏まえ、「金融界はサステナブル経済を創り出すためにグリーン投資に数兆ポンドを投じ、環境保護に貢献すべきだ」と、サステナブルファイナンスの重要性を強調した。皇太子の要請は、英シティの金融界へだが、東京での発言だけに、日本の金融界も耳を傾けてもらいたい。

 

 インタビューは英紙Evening Standardに掲載された。皇太子は、「サステナブルファイナンスは気候変動への闘いと、生物多様性の保護のカギを握っている。事態は悪化しており、地球の海洋、大気、土壌の悪化を改善するには、グローバルな資本市場が中心的役割を担わなければならない」と、金融の役割を強調した。

 

 皇太子は、これまでも環境問題には積極的な発言と行動を展開してきた。しかし、「私はこれまで35~40年間も民間企業とCSR等の活動に参加し、数えきれないほどのセミナーやワークショップに参加してきた。だが、真の問題解決には程遠い。その理由は金融機関が真の理解を欠いているのと、資本市場がそうした投資の必要性を理解してこなかったからだ」と、金融界をやんわりと批判した。

 

「プリンス・オブ・ウェールズ」だけに、ラグビーのウェールズの選手を準決勝前に励ました。
「プリンス・オブ・ウェールズ」だけに、ラグビーのウェールズの選手を準決勝前に励ました。

 

 「しかし」と皇太子は続けた。「突如、投資家たちは気づき始めたようだ。サステナブルファイナンスの投資リターンは、化石燃料事業の『Stranded Assets(座礁資産)』のような投資と比べて、今後、より大きなリターンを生み出すことがわかってきたようだ」と述べた。

 

 さらに「多くの人々が、もっとも効果的な事業に、直接、資金を投じることのできるサステナブル投資を探し求めている。再生可能エネルギー、森林再生、漁業や海洋をより持続可能にするための課題解決事業等だ。農業、さらに世界中で劣化している土壌の肥沃度の再建策等も投資対象だ」と指摘。サステナブルファイナンスの市場の拡大と、収益性向上の可能性が高まっているとの認識を示した。

 

 皇太子自身、金融界に呼び掛けるだけではなく、最近、世界経済フォーラムと共同で「Sustainable Markets Council」を設立している。同Councilは、企業や金融機関、各国政府等とともに、 「市場メカニズムを、サステナビリティと逆行しないように転換するための方策」を打ち出すことを目指している。

 

Charles2キャプチャ

 

 インタビューの中で皇太子は、日本の台風19号による被害で80人以上(87人)に及んだことを前提に、「(気候変動阻止の)行動は、地球が後戻りのできない点(Point of no return)を超えてしまわないうちに、迅速に実施されねばならない」と事態の緊急性を強調した。

 

 英王室は、女王に首相指名権などがあるほか、女王は「国民生活のあらゆる側面について知らされ、意見を求められるほか、大臣の参考のために非公式に自分の意見を自由に述べることができる」ともされる。基本は政治的発言はしないが、環境問題、サステナビリティ課題は、党派性のある政治課題ではなく、社会課題であることから、英王室だけでなく、欧州の王室関係者も発言や行動をとることがある。http://rief-jp.org/ct8/95046

 

 日本の皇室も、気候変動問題は、天地(あめつち)の平穏を脅かす課題であるだけに、もっと積極的に発言していただいてもいいように思える。少なくともチャールズ皇太子が、日本の台風被害を前提に、サステナブルファイナンスの重要性を指摘する対応は参考になるだろう。

 

https://www.standard.co.uk/news/uk/prince-charles-calls-on-city-to-invest-trillions-in-sustainable-schemes-to-help-save-planet-a4270691.html