横浜市の「街づくり協議会」による、再エネを利用した「強風に強い稲」開発プロジェクト。オーストリアの「エネルギーグローブ賞・国別環境賞」を受賞(RIEF)
2020-09-30 14:36:52
横浜市の市民団体が取り組むコメ作り支援装置開発事業が、オーストリアの財団から国際的な環境・エネルギー技術を評価する「エネルギー・グローブ賞」を受賞した。小型太陽光パネルやカーバッテリーなどを組み合わせて、大量の空気を含んだ水を水田に送り込むことで、台風に負けない強い稲を生育できるという。送電線のない途上国の田畑でも役立つ期待がある。
(写真は、東京のオーストリア大使館で行われた受賞式での記念撮影)
受賞したのは、横浜市青葉区の市民団体「恩田町堀之内地区まちづくり協議会」が開発した取り組みで、「移動可能な再生可能エネルギーを利用した強い米の開発プロジェクト」と名付けられた。同協議会は地域の課題解決を目的に2017年に設立された。
同地区は都市部だが、田園風景が広がり、農業を営む住民も多い。ただ、収穫間際の稲が温暖化の影響で強靭化した台風の威力で倒れてしまう悩みがあった。そこで協議会では代表の鈴木敏文氏を中心に、強風に負けない強い稲を作るプロジェクトを始動させた。
メンバーには、元エンジニアで大学院大学客員研究員も務めた桐原悦雄氏も参加。強い稲づくりだけでなく、安価な仕組みで再生可能エネルギーを活用することで、送電線のない途上国の田畑でも役立つプロジェクトを目指した。
設備は簡単だ。小さな太陽光発電の仕組みを作り、その電力でポンプを回して、大量の空気を含んだ水を水田に送り込む。太陽光パネルの出力は100Wで、家庭の屋根に設置するパネル1枚の半分以下。ポンプの動力も小さい。発電した電気を充電する蓄電池はカーバッテリーを転用している。
その結果、土が空気をたくさん含むことで稲の根が強くなり、台風に負けない強い稲になるという。昨年から試験栽培を実施しているが、結果は順調で、収穫前の試験栽培と通常の稲の束では直径3cmも太さに差が出たという。
実際に、昨年は収穫前に台風に襲われたが、稲は無事だった。協議会ではその後も研究を重ね、今年はポンプの空気の量を調整したり、スマートフォンで外部から水田の水温などをチェックできる農業IoTにも挑戦しているという。
エネルギーグローブ賞は、優れた環境プロジェクトに授与される国際的な賞で1999年にオーストリアで創設された。国連工業開発機関(UNIDO)などが協力し、180カ国から応募があるという。今回、国別賞として選ばれた。部門別に優れたプロジェクトを毎年表彰することで、環境保護へのモチベーションを高めることに貢献している。国別賞は2007年に新設されている。
鈴木代表は「国際的で非常に重い賞をいただいた。これからもチャレンジを続け、送電線のない途上国でも活用してもらえることを最終目標に頑張っていきたい」と語っている。