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内外の環境NGO32団体、輸入燃料に頼った日本の大型バイオマス発電は、「生物多様性を脅かし、気候変動を加速させる」と批判。同発電のFIT制度からの除外を求める共同声明(RIEF)

2020-12-04 17:33:06

biomasu001キャプチャ

 

 内外の環境NGO32団体は、海外で森林等を大量伐採したバイオマス発電用の燃料輸入が急増していることから、輸入に頼った大規模バイオマス発電は「生物多様性を脅かし、気候変動を加速させる」として、同種のバイオマス発電の利用を中止するよう求める共同声明を発表した。

 

写真は、木質ペレット生産のために皆伐された米国の湿地林:Dogwood Alliance。FOEジャパンのサイトから)


 共同声明は、グリーンピース、FOEジャパン、気候ネットワーク、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)等のほか、森林伐採等に反対する海外のNGOらも加わった。

 

 日本ではバイオマス発電は再生可能エネルギーとして扱われ、固定価格買取制度(FIT)で優遇的な買取価格が設定されている。しかし、近年、海外から輸入される木質ペレットなどのバイオマス燃料には、生産地において天然林の伐採拡大を引き起こすなど、生態系に大きな影響を与えている事例が各地で指摘されている。森林の過剰伐採は、森林や土壌が蓄えている炭素ストックの減少も引き起こしている。

 

 日本で設置される大型バイオマス発電の多くが燃料となる木質ペレット等を輸入に頼っていることから、違法な形での伐採や、品質不良の燃料を混入している疑いも生じている。日本の経産省、林野庁等のバイオマス燃料に対する監視体制の不備も指摘されている。

 

 輸入バイオマス燃料は、樹木が成長時にCO2を吸収していることを前提として、燃焼させてもカーボンフリーとみなす想定になっている。しかし、実際には燃料輸送によるCO2排出や、実際の燃焼時のCO2排出量が理論値と一致しているのかという疑問が内外で指摘されている。

 

 さらに、途上国の熱帯雨林の乱開発だけでなく、米国やカナダ等でも自然林を広大な範囲で皆伐して燃料化するバイオマス産業化が進行している。生態系の改変、改造が、先進国、途上国を問わず、大規模な範囲で進行しているわけだ。また仮にバイオマス発電はカーボンニュートラルと評価されたとしても、生態系破壊によるマイナスの影響への配慮はなされていないのが実態だ。

 

  FoE Japanの満田夏花事務局長は「バイオマス燃料の生産国では、長い年月をかけて形成された湿地林などが、輸出向けのバイオマス燃料生産のために伐採されてしまう事例が報告されている。『環境にやさしい』とされるバイオマス発電のために、どこかで森林破壊が生じている――これは大きな矛盾だ」と指摘する。


 気候ネットワークの東京事務所長の桃井貴子氏は「私たちの再エネ賦課金で、森林減少や温室効果ガスの排出増加につながるようなバイオマス発電事業が推進されていることは大きな問題」と、日本の再エネ政策のいびつさを指摘している。


 熱帯林行動ネットワークの川上豊幸氏は「日本に運ばれた燃料は、発電所で燃焼時に、実際にCO2が発生する。これは電気を使う日本の排出量としてはカウントされていない。国際的な炭素勘定の“抜け穴”となる恐れがある」としている。


 財務省貿易統計によると、木質ペレットの輸入量は2012年の約7.2万㌧から2019年には約161万㌧へと実に20倍以上に急増している。「再エネ電力」の美名の下に、地球上の森林が大量に消えているわけだ。NGOグループは、経済産業省や林野庁に、現在の再エネFITガイドラインの見 直しを求めていくとしている。

https://www.foejapan.org/forest/biofuel/pdf/201203_PR.pdf