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世界の石炭火力関連の機関投資家の投資1兆㌦超に。機関投資家部門で日本のGPIFが3位、銀行融資では日本の3メガバンクが上位独占。投融資見直しの遅さ反映。国際NGOの合同調査(RIEF)

2021-02-25 22:45:21

Urgewald003キャプチャ

 

    内外の環境NGOは世界の石炭関連企業934社への銀行や機関投資家による投融資状況を公表した。その結果、今年1月時点で、世界の年金、保険等の機関投資家全体で総額1兆300億㌦(約109兆円)を資金供給、機関投資家では、米BlackRockがトップで、米資産運用機関が全体の過半を占めた。日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も290億㌦(約3兆円)と上位にランクされた。銀行等による融資では、日本の3メガバンクがトップ3を占めるなど、日本勢の「石炭火力ファイナンス」の改善は一向に進んでいないことが浮き彫りになった。

 

 調査は、ドイツのUrgewaldや米Rainforest Action Network(RAN)、蘭BankTrack、日本の350.org Japan等の世界30の環境NGO、シンクタンク等が協力して実施した。今回は調査の対象をこれまでの銀行だけでなく、資産運用機関等の機関投資家にも広げた。また投融資を受けている石炭火力関連企業も、前年は世界で約200機関だったが、今回は5倍近く多い934機関と拡大した。

 

 今回初めて実施した機関投資家の調査対象は年金基金、保険、投資信託、資産運用機関、ヘッジファンド、商業銀行、ソブリンウェルスファンド、その他をカバー。全体で4488機関。石炭火力関連企業等への資金供給総額は1兆300億㌦(約109兆円)で、そのうち、最も多かったのは投資信託等の資産運用大手の米バンガード(Vanguard)の860億㌦(約9兆1000億円)。ついで世界最大の運用規模を誇るブラックロック(BlackRock)の840億㌦。両機関で機関投資家全体の石炭関連投資の17%を占めた。

 

 この大手2社だけでなく、米機関投資家全体の投融資額は6020億㌦で、全体の58%を占めた。独NGOのUrugewaldの金融調査責任者のKatrin Ganswindt氏は「欧州の機関投資家は、自らの投資ポートフォリオから石炭関連企業を除外するスクリーニングを始めている。だが、多くの米機関はそうした『イグジットポリシー(出口政策)』の採用を拒否している」と指摘している。

 

 RANの気候環境プログラム・ディレクターのPaddy McCully氏は、「バイデン米政権が、海外での石炭火力等の化石燃料事業を公的ファイナンスの対象から除外する大統領令を発したことを歓迎するが、同時に、世界中の気候汚染の巨大な推進役となっているウォールストリートの役割を解決しなければならない」と強調している。

 

 米機関投資家とともに「問題が多い」実態が浮き上がったのは、日本の機関投資家だ。日本の機関投資家全体の石炭火力関連投資総額は810億㌦(約8兆6000億円)で、米国に次ぐ2位を占めた。その約3分の1は、GPIFによる290億㌦(約3兆円)分だ。GPIFはESG投資資産は5.7兆円(2019年度)を抱えるとするが、同時に、同資産額の過半を超える「石炭資産」を保有しているわけだ。右手で「ESG資産」、左手で「石炭資産」という姿だ。

 

 日本に次ぐ第3位の石炭火力ファイナンス国は英国の470億㌦。Ganswindt氏は「英国政府は海外での化石燃料ファイナンスを今年末までに停止すると発表したが、民間の年金等は投資ポートフォリオの見直しをまだ始めていない。こうした『宿題』を解決しないと、11月に英国で開く国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)ではこうした機関投資家は恥をかくことになるだろう」と警告した。

 

 銀行等による石炭火力産業向け融資総額は、過去2年の間に、世界381の銀行等で3150億㌦(総額33兆4400億円)に達した。上位の「ワーストスリー」は、みずほフィナンシャルグループ(220億㌦)、三井住友フィナンシャルグループ(210億㌦)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(180億㌦)と、日本の3メガバンクで占められた。4位の米Citigroup(135億㌦)、5位英バークレイズ(134億㌦)と続くが、絶対額でも日本勢が群を抜く。

 

 350.org Japanの渡辺瑛莉氏は「日本の銀行の石炭政策は世界で一番弱い。銀行融資のうちの一部(プロジェクトファイナンス)しかカバーしておらず、企業向けローンのほか、国内やベトナム等の東南アジアで建設中の石炭火力事業向けファイナンス等は除外している。日本の銀行はこうした追加的なファイナンスを停止し、包括的な石炭除外政策を採用するべきだ」と述べている。

 

 日本の大手銀行等は、ここ1~2年の間に、融資ポリシーの改善等で石炭火力向け新規融資の原則停止等を打ち出している。ただその対象は、新規事業に絞っており、かつ例外規定も設けている。既存の融資の見直し、削減については「時間をかけて対応する」姿勢で、NGOや機関投資家の強い圧力や要請を受ける欧米の銀行等の見直しスピードの違いが、「ワースト・ジャパン」の姿に反映しているようだ。

https://www.banktrack.org/article/groundbreaking_research_reveals_the_financiers_of_the_coal_industry

https://coalexit.org/sites/default/files/download_public/Financing%20GCEL%202020_Press%20Release_urgewald.pdf