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カナダの21の環境団体、国際協力銀行が目指すカナダのシェールガス液化事業計画への融資停止を要請。連動するパイプライン問題では先住民族の土地の無断使用で対立(RIEF)

2021-06-03 22:18:12

Canada002キャプチャ

 

  カナダの21の環境団体が国際協力銀行(JBIC)に対し、カナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州で、先住民と対立するパイプライン事業を前提に計画されている太平洋側での港湾建設計画への融資停止を求める共同書簡を提出した。同事業はカナダ北東部で開発するシェールガスを、東京―大阪よりも長い約670kmのパイプラインで太平洋まで運び出し、日本やアジア市場に輸出する計画。しかしパイプライン計画が先住民族の土地の通過を巡って対立が長期化している。

 

 

   (写真は、すでに全体の約25%が建設されているコースタル・リンク・パイプライン事業)

 

 パイプラインはBC州北東のモントリーで開発したシェールガスを、同州太平洋側のキティマット港までパイプラインで輸送するもの。コースタル・ガスリンク・パイプライン計画と呼ばれる。TCエナジー社(旧・トランスカナダ社)の子会社のコースタル・ガスリンク社が建設主で、総額約66億カナダ㌦(約5500億円)。日本の3メガバンクと三井住友信託銀行も融資団に参加している。

 

 しかし、パイプラインは先住民族のウェットスウェテン(Wet’suwet’en)族の土地を通過する計画だが、同民族は2007年から反対運動を続けている。ところが、BC州の最高裁は事業会社側の主張を認める判断を示し、一方で、国連人権差別撤廃委員会がカナダ連邦政府にパイプライン計画等の中止を決議するなどの対立が続いている。

 

  黄色の線がパイプライン

黄色の線がパイプライン

 

 LNGカナダプロジェクトは、パイプライン計画とは別建てで、シェルや、中国石油天然汽(ペトロチャイナ)、三菱商事等が出資するLNGカナダディベロップメント社が事業主体。総額400億カナダ㌦で、パイプラインで運ばれてきたガスを液化し、日本や中国、韓国等に輸出する港湾施設等を建設する計画だ。JBICはこちらの事業への融資を日本の銀行団とともに検討している。

 

 だがパイプライン計画と、港湾建設は一体のものである。環境団体らがJBICに提出した共同書簡では、「この事業が完成すれば、カナダで最もCO2を排出する施設の一つになる。LNGカナダプロジェクトが稼働すると、年間9.6M㌧のGHGが排出される。米国は最近、日本に対し、LNG を含む化石燃料事業への国際的な公的融資を停止するよう求めたと理解する。われわれはバイデン政権のこうした要請に同調し、JBICに対してLNGカナダ事業への投資計画を止めるよう要請する」と求めた。

 

 さらに「LNG事業は、ガスを燃焼してガスの液化を行うため、大きな環境汚染につながる。上流でのガス採掘とガスの処理の工程で排出されるメタンが、ガス事業による気候への影響をさらに悪化させる。日本は2030年までのGHG排出量の46%削減を約束したにもかかわらず、さらにLNGに投資することは容認できない」と指摘している。

 

 カナダの環境団体Wilderness Committeeの気候変動キャンペーナーのピーター・マッカートニーは、「この事業は、完成すればカナダでもっとも汚染を引き起こす施設の一つになる。カナダ政府の気候変動目標達成を困難にする。国際エネルギー機関(IEA)が先週述べたように、気候変動を安全な水準に抑えるには、新たな化石燃料インフラへの投資は止めるべきだ」と求めている。

 

https://www.foejapan.org/aid/jbic02/lngcanada/210528.html