HOME7.金融NPO |G20諸国の海外向け公的支援で年630億㌦が途上国の化石燃料事業に。再エネの2.5倍。日本は全体の2割近く、カナダ、韓国と並ぶ「『最悪』公的ファイナンス国」。環境NGOが報告(RIEF) |

G20諸国の海外向け公的支援で年630億㌦が途上国の化石燃料事業に。再エネの2.5倍。日本は全体の2割近く、カナダ、韓国と並ぶ「『最悪』公的ファイナンス国」。環境NGOが報告(RIEF)

2021-10-31 00:01:01

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  20カ国首脳会議(G20)が開催されているが、G20各国が2018年から20年の3年間に、途上国等海外での化石燃料事業に公的資金を年平均630億㌦(約7兆2000億円)投じたことが国際NGOの報告書でわかった。再エネ投資の約2.5倍に達する。そのうち、日本の国際協力銀行(JBIC)等は全体の17.3%に相当する109億㌦(約1兆2000億円)を占め、カナダ、韓国とともに、最大の化石燃料公的ファイナンス国となっている。

 

 報告書は、環境NGOの「Friends of the Earth U.S.」と「Oil Change International」が28日に公表した。報告書を執筆したFriends of the Earthの国際金融プログラムマネジャー、ケイト・デアンジェリス(Kate DeAngelis)氏は「世界が燃え、気候変動の影響がどんどんひどくなっている中でも、日本は化石燃料に数十億㌦もの資金を投入しようとしている」と指摘。「2050年ネットゼロ」を宣言しながら、足元では化石燃料投資に国費を投入し続ける姿勢を変えようとしない日本政府への不信感を強めている。

 

 報告書によると、公的ファイナンス支援額年630億㌦に対し、再エネ支援額は260億㌦。日本の同期間中の海外での再エネ支援額は年13億㌦で、化石燃料支援額の12%でしかない。日本政府は2030年までのエネルギー基本計画で、温室効果ガス46%削減を実現するため、海外から1億㌧のカーボンクレジットを購入する計画を立てているが、その場合の海外投資も再エネ事業よりも、化石燃料発電等へのCCUS事業への公的投資によるクレジット獲得を目指している。どこまでも化石燃料支援の姿勢を貫くスタンスのようだ。

 

国ごとの海外での化石燃料ファイナンス額
国ごとの海外での化石燃料ファイナンス額

 

 日本の海外での化石燃料公的支援額は、期間を2012年から2020年までに広げてみると、G20での最大の融資国になるという。日本の海外向け公的金融機関は、開発金融を担当する3省(経済産業省、財務省、外務省)と2輸出信用機関(日本貿易保険、国際協力銀行)等。

 

 パリ協定の目標達成のためには、途上国での温暖化対策を促進する必要がある。このため、G7は今年、海外石炭への公的支援を年内に終了するとコミットした。日本政府もコミットした形だが、日本はバングラデシュのマタバリ2石炭火力発電所やインドネシアのインドラマユ石炭火力発電所に対するJBIC等による公的支援を継続する方針を捨てていない。

 

 さらに日本は、LNG生産を世界的に拡大し、アジアのLNG市場を拡大するために数十億㌦の投資を計画している。CCUSについてもアジア中心に事業拡大を提案している。

 

 

2012年から20年までの海外での化石燃料向け公的ファイナンス(国際公的金融機関も含む)全体額の推移
2012年から20年までの海外での化石燃料向け公的ファイナンス(国際公的金融機関も含む)全体額の推移

 

 デアンジェリス氏はさらに、「世界の科学者たちが気候変動対策の緊急性に警鐘を鳴らしているにもかかわらず、日本はこの赤信号を無視し続けている。日本はこの呼びかけに耳を傾け、これを最後にきっぱりと化石燃料から再エネへと資金をシフトしなければならない」と、日本政府に対して「明確な変化」を求めている。



 国際エネルギー機関(IEA)の1.5°Cシナリオは、新たな化石燃料生産への投資はすべて停止し、サプライチェーンの他の部分では化石燃料の急速な段階的廃止の必要性を示している。途上国での再エネ投資や適応策強化のために、先進国は2020年までに年間1000億㌦の気候資金を提供することにコミットしているが、それはまだ果たされていない。化石燃料への公的支援の継続は既存の気候資金のプラス効果も妨げてしまう。

 

 途上国への公的金融による化石燃料支援のトレンドには「変化」も表れている。ファイナンスの対象事業の51%が天然ガスに変わっている点だ。ガス事業には年間320億㌦が投じられ、2018年から2020年の3年間では、他のどのエネルギー源の事業への投資額より大きく、再エネ事業支援の合計額を上回った。対照的に、石炭は年間80億㌦でガスの4分の1、 石油事業は230億㌦。天然ガスからのCO2排出量は石炭の半分程度とされるが、化石燃料に違いはなく、ガス開発が増大するとCO2排出量も確実に増大する。

 

 一方、 途上国の再エネ事業への国際的な公的支援は2014年以降、ほぼ停滞している。再エネ事業に対する貿易・開発金融は、世界的に公正なエネルギー移行を支援するために必要な指数関数的な成長は見せておらず、2014年以降、年間200億㌦から270億㌦の間で停滞しているという。



 Oil Change Internationalの公的資金キャンペーンの共同マネージャーのブラウエン・タッカーは「公的金融は、他の投資家の 『リスクを取り除く』働きがあるため、桁外れの影響力を持つ。3年間で化石燃料開発に投じられた公的資金総額1880億㌦は、新規の石油、ガス、石炭への、はるかに多くの民間投資を可能にしたことになる。これらの政府による優遇融資、助成金、保証がなければ日の目を見ることはなかった化石燃料事業が可能になっている」と指摘している。

https://priceofoil.org/2021/10/28/past-last-call-g20-public-finance-institutions-are-still-bankrolling-fossil-fuels/

http://priceofoil.org/content/uploads/2021/10/Past-Last-Call-G20-Public-Finance-Report.pdf