HOME4.市場・運用 |国内のインパクト投資残高、2021年度は1兆円超えの1兆3204億円に。前年度比4倍増。銀行のインパクトローン増などが市場拡大を後押し。社会変革推進財団等が調査(RIEF) |

国内のインパクト投資残高、2021年度は1兆円超えの1兆3204億円に。前年度比4倍増。銀行のインパクトローン増などが市場拡大を後押し。社会変革推進財団等が調査(RIEF)

2022-04-28 16:06:36

impact002スクリーンショット 2022-04-28 154939

 

 財務リターンと並行して環境・社会的インパクトを求めるインパクト投資の2021年度の国内投資残高が1兆3204億円と前年度より4倍に膨らんだとの調査結果が公表された。インパクト投資の概念自体が定まっていない面もあるが、急拡大といえる。調査を行った社会変革推進財団(SII)等では日本市場でのインパクト投資の潜在力を、今回の推計のさらに4倍増の5兆3300億円と推計している。

 

 調査は、SIIと、国内でインパクト投資のグローバルネットワークのGSGの国内諮問委員会が実施した。機関投資家や金融機関を対象としたアンケートを実施、インパクト投資への取り組み状況を把握した。対象機関数は580(回答77、回収率13.2%)。調査団体が設定したインパクト投資の定義に該当する投資活動を集計した。

 

 調査に回答した77機関のうち、実際にインパクト投資に取り組んでいるのは31機関。運用機関6社、銀行・信託銀行6行、ベンチャーキャピタル、保険会社、信用組合・信用金庫など。財団法人や学校法人も含まれるという。

 

Impact001スクリーンショット 2022-04-28 154855

 

 調査結果は、2021年度の投資残高が20年度より大きく膨らんで、1兆円台を超える1兆3204億円となった。ほぼ1兆円の新規投資が同年度だけで実施されたことになる。インパクト投資の測定結果を最終投資家と評価を共有していないケースも含めると、残高は1兆4814億円に拡大するとしている。

 

 SII等は21年度にインパクト投資が急増した理由について、すでにこれまで同投資に取り組んできた機関がさらに取り組み額を増やしたほか、新規の取り組み機関も増えてきたためとしている。既存機関の取り組み残高は20年度は3226億円だったが、21年度はほぼ倍の6563億円と拡大している。

 

 一方、同投資への参入・取り組み機関数は、20年度の20社に対して、21年度は31社と、約1.5倍。このうち新規機関による同年度の投資額が既存の取り組み機関の残高を上回る6641億円あったことになる。またインパクト投資のアセットクラスが上場株式や上場企業への融資等へと多様化し、一軒当たりの投資額が増えていることも残高増につながったとしている。融資面では都市銀行や地方銀行のインパクトローン等が増えているという。

 

 SII等は「日本のインパクト投資の成熟度合としては、『これから成長していく段階』と多くのインパクト投資取組機関が認識しており、グローバルな投資市場が『順調に成長している』ことに比べ 、まだこれからという段階であることも確認できた」としている。

 

 今回示されたインパクト投資市場の調査は、アンケートによる取り組み機関の自己申告データの集計である点と、同投資についての定義が取り組み機関で定まっていない問題、回答率の低さ、等のいくつかの課題がある。だが、ESG投資、サステナブルファイナンスの一つの領域として、インパクト投資への正面からの取り組みが、国内でも広がってきたことを示すものといえる。

https://note.com/siif_pr/n/n82ebac788e03