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日本政府が石炭・ガス火力等のCO2排出削減策とするCCS技術の開発・実証化に投じた国費はこれまでに52億㌦(約7900億円)。回収したCO2は30万㌧だけ。世界最高値の回収コスト(RIEF)

2025-10-14 12:00:12

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(写真は、Fossil Free Japanのサイトから引用)

 

 日本政府がGX政策に基づいて、既存電力会社・JERA等の石炭・天然ガス火力発電や多排出産業から排出されるCO2を回収・貯留するCCS技術の開発・実証化に、2014年以来これまでの10年超で総額52億㌦(約7900億円)を投じたことがわかった。この間の日本での同事業は実証化にほど遠く、回収・貯留したとするCO2量はわずか30万㌧だけ。国際NGOのオイル・チェンジ・インターナショナル(OCI)が調査で明らかになった。日本のCCSによるCO2削減コストは最大で㌧当たり26万円強と、世界最高額となる。報告書は「(日本政府は)この排出削減効果の乏しい技術を東南アジア全域で強く推進するとともに、同地域を日本の炭素廃棄物の投棄場に変えようとしている」と強く批判している。

 

 公表された報告書は「New Research: Japan Pours $5.2 Billion in Public Funds on Failed Carbon Capture Tech First-ever analysis exposes how much the Japanese government subsidizes fossil fuel industry while derailing Southeast Asia’s renewable energy transition (日本が「失敗した炭素回収技術」に52億㌦の公的資金を投入ーー日本政府が化石燃料産業に多額の補助金を支給する一方で、東南アジアの再エネ移行を阻害している実態が初の分析で明らかに)」と題している。

 

 日本政府はこれまでCCS事業をGX政策の中心施策に据えながら、同事業に投じてきた国費(国民の税金)については明確に示していない。報告書を公表したNGOのOCIは、「日本政府のデータには透明性が欠けているため、推計額(52億㌦)はおそらく控えめな推計だ。同額には、CCSおよび化石燃料水素(ブルー水素)と明確に定義された補助金のみを含めたが、政府データで『CO2排出削減』や『水素』とのみ記載されている事業への補助金は含めていない」と説明している。これらを含めると、総額はさらに大きく膨らむことになる。

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 日本政府は、2030年までにCCSの商用化を目指し、2050年までに年間1億2000万〜2億4000万㌧のCO2を回収するとしている。ただ、これまでに日本が実施したCCS事業は、北海道の苫小牧CCS実証試験だけ。同事業は2016年から2019年の間に年間10万㌧、合計30万㌧のCO2を回収したと報告されている。同事業に3億6400万㌦(約550億円)の公的資金を費やしたことから、2050年のCO2回収目標を達成するには、この苫小牧事業と同じ規模の事業を最大で2400件分、積み重ねる必要があることになる。

 

 これまでのCCS補助金52億㌦の成果が苫小牧CCS事業の回収量のみとすれば、同事業での30万㌧とされるCO2の回収・貯留コストは1㌧当たり26万円余となる。世界最高のCO2価格(世界で最もコスト高で、経済性の乏しいCCS価格)となってしまう。

 

 報告書は、過去50年間にわたって(CO2削減の)成果を上げていない『失敗してきた技術』であるCCSに対し、日本政府が投じてきた補助金の概要を、自主調査で初めて示した。数十年に及ぶ開発努力にもかかわらず、世界のCCS事業が回収しているのは、世界の排出量全体のわずか約0.1%に過ぎない。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2023年の第6次報告書(AR6)において、CCSを「現在利用可能な排出削減手段の中で、最も効果が低く、最も高価なものの一つ」との評価を与えている。

 

北海道・苫小牧での実証プロジェクトサイト(苫小牧市のサイトから引用)
北海道・苫小牧での実証プロジェクトサイト(苫小牧市のサイトから引用)

 

 そうした技術開発・実証化に対して、日本政府は2014年以来、52億㌦の補助金を費やしてきたわけだ。同報告書によると、それらの補助金の受給先の企業として、「化石燃料に大きく依存する製鉄所や化学工場、石油精製所、火力発電所であり、三菱重工業、石油資源開発株式会社(JAPEX)、INPEXなどが公的資金を受けている」と明示している。「化石燃料の採掘と燃焼の継続から利益を得る、化石燃料の拡大を推進する企業に直接流れている」ことになる。

 

 これらの企業は、自らの事業からのCO2排出削減投資を、自己資金ではなく、国の公的資金でカバーされることになり、かつ同事業の成果がない場合でも、補助金は国に返済する必要がない。つまり「無コスト資金」となる。このため、欧米(トランプ政権下の米国を含め)では、国や州等による補助金の配分については、財政規律を確保するため、配分先、配分額等を含め、厳格な情報開示が義務化されている。だが、日本では政府の情報開示は極めて限定的で「(国民に)隠すような」取り扱いになっている。

 

 OCIが問題とするのは、こうした日本のCCS資金が、日本国内だけでなく、太陽光・風力の潜在力の99%以上が未活用である東南アジアにおいて、日本が自国およびアジア地域での化石燃料依存を長引かせるために、使われているという点だ、としている。

 

 報告書によると、日本は、2023年に始動した「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」を通じて、効果のない日本のCCS事業モデルを、アジア全域で積極的に推進している。日本政府は、「AZECは脱炭素化を支援する」と主張するが、実際には化石燃料拡大のための手段となっている。AZECの下で2023年3月から2024年10月の間に署名された158件の覚書(MOU)のうち、35%が化石燃料関連技術に関わるものであり、そのうち、CCSに関わるものは23件に上る、と明かしている。

 

 日本がアジア全域にCCS事業を展開しようとしている理由は、「日本は、回収したCO2をすべて国内で貯留することができないため、国内の炭素廃棄物を東南アジア諸国へ輸出する計画を立てている」とみている。実際に、日本のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が選定した9件の優先的CCS事業のうち、4件は日本で回収したCO2をマレーシアおよびオーストラリアへ輸送する計画となっている。

 

 報告書は、日本政府に対して、「CCSへの公的資金」という無駄な支出を廃止し、公的資金を再エネ事業に振り向けるための以下の提言を示している。

 

 ①日本政府はCCS事業、とりわけ海外にCO2を輸出する事業への資金提供を廃止すべき。

  ②日本は、国内外の再エネ事業(特に最も再エネを必要としているコミュニティや国々における事業)、そして公正なエネルギー移行を可能にする重要なインフラ整備に対して、公的資金を優先的に投じるべき。

 ③AZECのパートナー国は、CCSや水素といった「危険な誤った対策」ではなく、地域の再エネ発電の潜在力の高さを考慮し、風力や太陽光事業の開発を優先すべき。

 

 OCIのシニア・キャンペーナーの有馬牧子氏は「日本が効果のないCCS技術に多額の資金を費やしていることは、気候危機を悪化させる典型的な例だ。われわれの調査は、日本政府が気候対策を装いながら、公的資金を使って化石燃料企業に補助金を与えている実態を明らかにしている。日本はAZECおよびその下で進められている輸出計画を通じて、この『効果のないエネルギー戦略』をアジア全域に輸出し、本来であれば公正な再エネ移行を遂げるべきアジア地域を、数十年にわたって化石燃料依存に縛りつけようとしている」と指摘。日本のCCS計画の欺瞞性を強調している。

 

 FoE Japanの事務局長、深草亜悠美氏は「日本政府は、50年間にもわたり失敗してきたCCS技術に数十億円もの公的資金を投じることで、日本の国民および近隣諸国を裏切っている。日本は、アジアを再エネ事業の未来に導く代わりに、民間企業にCCSに対する補助金を与えることで化石燃料を存続させようと必死になっている。私たちは、日本政府に対し、こうした無駄で有害な補助金を廃止し、国内およびアジア地域全域のコミュニティを守る解決策に投資するよう求める」

 

 シンクタンク「Climate Analytics」の気候・エネルギー政策アナリストのジェームス・ボウエン(James Bowen)氏は「日本のCCS支援は、日本国内だけでなく東南アジアやオーストラリアにおいても、化石燃料の使用を存続させることを狙うものだ。この方針は追加的な排出を招き、パリ協定を致命的に損なうリスクがある。日本のCCS支援は、パートナー国の石油・ガス生産者には利益をもたらすが、経済全体の観点では高くつき、気候対策の妨げであることが明らかになるだろう」としている。

                            (藤井良広)

 

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https://fossilfreejapan.org/

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